FIA(国際自動車連盟)とフェラーリによるF1エンジン不正行為疑惑の“秘密の和解”に対して先頭に立って徹底抗議の姿勢を見せていたはずのメルセデスが、フェラーリと“秘密の和解”に合意したと報じられている。昨年、フェラーリがF1エンジンの燃料流量制限を回避する抜け穴を発見したとの噂が広まり、2019年シーズン後半はFIAの精査の焦点となった。
しかし、F1バルセロナテスト終了後というメディアを考慮する必要のないタイミングで、FIAはフェラーリと2019年のF1エンジンの不正行為疑惑に対して和解に達したと発表。詳細な内容はフェラーリとFIAの間との間で保持するとした。これに激怒した非フェラーリ系の7つのF1チームは、メルセデスのF1チーム代表トト・ヴォルフのイニシアチブで連盟でFIAに対して抗議文を送付。だが、FIAは調査の結果、フェラーリ製PUの合法性に疑いはあったものの、“違反の明確な証拠を出せない”ことを理由に、2者の間で和解合意を結ぶことにしたと説明した。この回答に7チームが納得するはずもなく、2通目の抗議文を送付して、法的措置を辞さない構えを示していた。彼らはフェラーリのF1エンジンの不正行為が事実であれば、コンストラクターズ選手権2位をはく奪して、賞金を再分配するべきだと主張している。しかし、ここへ来て、メルセデスがFIAとフェラーリとの抗議から手を引いたと F1-Insider は報道。FCAとフェラーリのジョン・エルカン会長とダイムラーの最高経営責任者(CEO)のオラオラ・ケレニウスとの間で会談が行われ、メルセデスはこの問題を解決したという。昨年のコンストラクターズ選手権を1位で終えたメルセデスは、フェラーリが選手権から除外されたとしても、賞金には影響が出ない。メルセデスが実際に7チームのグループを放棄した場合、エンジンカスタマーであるレーシング・ポイントとウィリアムズも追随する可能性があり、その結果、レッドブル、アルファタウリ、ルノー、マクラーレンの4チームがFIAへの行動に対する責任を負うことになる。新型コロナウイルス問題に直面したF1オーストラリアGPでは、続行か中止かを巡って自動車メーカー系チームと独立系チームとの間で意見が割れた。レッドブルは、メルセデスのDASシステムについて異議申し立てをする準備を進めており、ルノーはレーシング・ポイントF1チームの“ピンク・メルセデス”に抗議するとも噂されている。2020年のF1世界選手権の開幕が見えないなかで、各F1チーム間の政治的な争いも行方が見えない状況となっている。