メルセデスF1チームのチーフストラテジストを務めるジェームス・ボウルズは、F1アゼルバイジャンGPの予選で実行した“ダミースタート”戦略にはルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスの最後のアタックを危険に晒す可能性があったことを認めた。予選Q3の最終走行で完璧なスリップストリームを得るため、バルテリ・ボッタスとルイス・ハミルトンは速めにガレージを出たものの、ピットレーン出口で“スタート練習”をするためにマシンを路肩に寄せて待機。
メルセデス勢に続いてガレージを出たセバスチャン・ベッテルは、結果的に先頭でコースインすることになり、スリップストリームなしで走行することを余儀なくされ、3番手で予選を終了。対照的にスリップストリームを得ることができたメルセデスは、バルテリ・ボッタスがポールポジション、ルイス・ハミルトンが2番手とフロントローを独占した。メルセデスのF1チーム代表を務めるトト・ヴォルフは、後にこの“ダミースタート”が計画的だったことを明かしたが、ジェームス・ボウルズはリスクの高い戦略だったと認める。「過去数戦のピットレーンでは我々がメキシカン・スタンドオフ(※)と呼ぶ光景を見てきたと思う」とジェームス・ボウルズはコメント。※多人数が互い違いに両手の銃を向けあって動けなくなったシチュエーション「誰もが自分たちのエンジンを始動させ、誰が最初にコースに出ていくだろう?と互いを見ている。最初にコースに出れば、事実上、他のドライバーのトウを生み出すことになる」「上海では、我々は非常に遅れて出発したし、周回することさえできなかった他のマシンがいたのを目にしたと思う。彼らはトウを得たかったが、ラップを開始する前にチェッカーフラッグが出てしまった」「バクーでは、トウ効果ポールにいるかどうかを決定付ける可能性があることを非常に意識していた。したがって、我々は少し早めにクルマを送り出して、クルマのトレイン全体を我々の後ろに引き出すことに決めた。それはうまくいった」「その後、左側でスタート練習を行った。単純に我々が列の先頭にならないようにね。シンプルにトウ効果に非常にパワフルだと感じていたからだ。それは莫大なリスクだった。結果として、チェッカーフラッグのほんの数秒前にラインを越えた。しかし、今回の状況ではそれはうまくいった」「我々は路肩にクルマを寄せ、他のクルマが通り過ぎ、ベッテルが集団をリードして、この特有の機会にトウを得られなった。我々のクルマはライバルの後ろの素晴らしいポジションに入り、トウと良いトラックポジションの両方から利益を得ることができた」このメルセデスの策略は外部から見れば単純で生産的なものに見えたが、それでもジェームス・ボウルズはかなりの量の準備が必要だったと語る。「この種の計画は、事前にかなり議論しなければうまくいかない。特にドライバー二人ともが理解し、受け入れ、計画に同意していなければならない」とジェームス・ボウルズは説明する。ドライバーにとっては非常にプレッシャーの高い予選Q3で通常のルーチンとは非常に異なることを実施しなければならないことになる。「我々は午前中にそれについてドライバーと話し合い、我々が予選でやるかもしれないことを彼らが完全に理解していることを確認した。彼らが出ていく前にも彼らが要求されていることを正確に理解できているか再び念を押した。そして、彼らは素晴らしい仕事をした」