F1トスカーナGPでは、セーフティカー後のリスタートで実質的にレースが再開される前に4台がリタイアする大クラッシュが発生した。それは主にムジェロ・サーキットの特異なレイアウトに起因するものだった。F1トスカーナGPではオープニングラップでマックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリーがリタイアした接触事故を処理するためにセーフティカーが導入された。
セーフティカー先導で7周を走った後、レースは再開。しかし、そこで事故は起こった。ケビン・マグヌッセンにアントニオ・ジェビナッツィが接触し、反動でニコラス・ラティフィに接触。後続のカルロス・サインツがそこに突っ込んだ。この事故でレースは赤旗中断を余儀なくされた。この事故はセーフティカーラインとコントロールライン(スタート/フィニッシュライン)との間隔が800mというムジェロ・サーイットの独特なレイアウトが起因した。セーフティカーがオレンジ色の灯火を点灯させている間、レース先頭車両はセーフティカーの後方車両10台分以内の車間距離を保たなければならない。だが、「SAFETY CAR IN THIS LAP(セーフティカーはこの周回で入る)」のメッセージが全チームに送信され、セーフティカーがオレンジ色の灯火を消すした時点で、セーフティカー後方に位置する先頭車両が走行ペースを決めることができ、必要であればセーフティカーとの車間距離を車両10台分以上とすることが可能となる。通常、先頭のドライバーは、セーフティカーが退場するのを待ち、加速するタイミングを自分で決める。だが、今回、セーフティカーの灯火が消えるのが非常に遅かったため、先頭のバルテリ・ボッタスはセーフティカーラインまでに距離を開けることができなかった。そのため、コントロールラインまでの長い距離で後続のルイス・ハミルトンにスリップストリームを使用されずに順位を守る唯一の方法はセーフティカーラインからコントロールラインまでゆっくりと走行してスリップストリームを与えず、コントロールラインを越えてから加速することだった。コントロールラインを超えるまでオーバーテイクは禁止されている。そして、バルテリ・ボッタスの背後のマシンは、周囲のマシンよりも早くに加速して順位を奪うために、ボッタスがいつ加速を開始するかを予想しながら機会をうかがっていた。その加速と減速による効果は、後ろにいくほど拡大する。最終的に渋滞する後方のマシンに共鳴し、複数の事故につながった。通常のようにセーフティカーがインラップで早目に灯火を消していれば、バルテリ・ボッタスは、後続マシンはのアクションに反応せざるを得ないというアドバンテージを利用して、加速して後続との差を広げていたはずだ。セーフティカーとの距離を車両10台分以下に維持するという義務から解放されたボッタスは、おそらくターン12のあたりで車列をまとめることができただろう。だが、F1レースディレクターのマイケル・マシは、事前にこのような状況になることはF1ドライバーに伝えていたとし、“世界最高の20名のドライバー”は“ルールを知っておくべき”だとして競技審査委員会に落ち度はなかったと主張している。