ルイス・ハミルトンがフェラーリで新たなレースエンジニアを探していることは周知の事実だが、ひとつだけ確かなことがある。それは、長年の盟友であるピーター・ボニントン、通称“ボノ”が、リカルド・アダミの後任としてマラネロに加わることはない、という点だ。ハミルトンとアダミの関係が2026年も続かない決定的な兆候は、2025年シーズン最終戦に表れていた。
Q1敗退を喫し、中団からポイント圏を目指して追い上げていたハミルトンは、無線で「前に誰がいるかは伝えないでくれ」と要請したが、アダミは情報を伝えた。その直後、ハミルトンは「もういい、僕に任せてくれ」と応じた。このやり取りは、23戦以上を共にしてもなお解消されなかった“噛み合わなさ”を象徴する場面だった。アダミは、かつてセバスチャン・ベッテルやカルロス・サインツJr.を担当してきたフェラーリのベテランだが、現在はフェラーリ・ドライバー・アカデミーおよびTPC(旧型車テスト)運営を担当する役割へ異動している。一方で、ハミルトンの新レースエンジニアは、開幕戦オーストラリアGPを前にしても、まだ発表されていない。しかし、その後任がボニントンでないことだけは明白だ。ハミルトンは公の場では、フェラーリ加入初年度に苦しんだアダミを支持し続けていたものの、環境適応が容易でなかったのは事実だ。アダミが複数ドライバーとの仕事を経験していたのに対し、ハミルトンはメルセデスで12年間、ほぼ一貫して“ひとつの声”と共に成功を築いてきた。ハミルトンとボニントンのコンビは、F1史上最も成功したドライバーとエンジニアの関係とされ、6度のドライバーズタイトルと、メルセデスでの84勝中83勝を挙げている(ボニントンが不在だったのは2019年メキシコGPのみ)。ハミルトンのフェラーリ移籍が2024年2月に発表された際、「ボノも共にマラネロへ向かうのか」という疑問が浮上したのは自然な流れだった。だが、その答えは明確だった。ボニントンは、ルーキーのアンドレア・キミ・アントネッリを担当するだけでなく、メルセデスのトラックサイド・パフォーマンス部門責任者という拡張された役割を与えられた。ハミルトンは単身でイタリアへ向かうことになった。仮にハミルトンがフェラーリに対し、アダミの後任としてボニントンを求めたとしても、2026年シーズンに間に合う可能性は極めて低い。メルセデスの技術組織内で高い地位にあるボニントンが移籍する場合、機密情報の流出を防ぐため、1年以上に及ぶガーデニングリーブ(競業避止期間)が課されるのが通例だからだ。その場合、ボニントンがフェラーリのピットウォールに立てる最短時期は2027年になる。しかし、20年目のシーズンが19年目と同様に厳しいものとなれば、ハミルトンが21年目をF1で迎えている保証はない。結果としてハミルトンは、2026年に向けて、3シーズン連続で異なるレースエンジニアと組むことになる。2025年の苦難、そして自身が嫌悪してきたグラウンドエフェクト時代を振り払い、F1の“大胆な新時代”で再起を図るための、またひとつの不確実な挑戦が始まろうとしている。