FIA公認の複数のオープンホイールシリーズが、SNS上の誹謗中傷を非難する共同声明を発表した。これは、F2選手権リーダーのアレックス・ダンがモナコGP後に誹謗中傷の嵐にさらされ、携帯からSNSアプリを削除せざるを得なかったと明かしたことを受けての対応となる。FIA(国際自動車連盟)は、F1をはじめとする国際モータースポーツおよびF1への登竜門となる各カテゴリーを統括する組織である。
FIA、F1、F2、F3が連名でインスタグラムに投稿した声明では、次のように述べられている。「我々のチームおよびドライバーを代表して、F1、F2、F3、そしてFIAは『United Against Online Abuse(ネット上の誹謗中傷に反対する団結キャンペーン)』を通じて、あらゆる形の誹謗中傷とハラスメントを断固として非難する」「SNSプラットフォーム上での誹謗中傷に対して、今後も引き続き共同で通報・対処していく」「ファンであっても、モータースポーツ界の一員であっても、我々を突き動かしているのは『情熱』だ」「その中心にいるのは『人間』だということを忘れてはならない」「すべてのアスリートとそのチームに対して、敬意を持って接していただきたい」この「United Against Online Abuse(UAOA)」キャンペーンは、2022年にFIA会長モハメド・ビン・スライエムが、アメリカGPにおいてレーススチュワードがSNS上で大規模な誹謗中傷を受けたことを受けて設立したものである。UAOAの目的は、リサーチ、教育、政策開発といった手段を通じて「協力的かつ分野横断的な取り組み」により、誹謗中傷に対して具体的かつ測定可能な変化を生み出すことにある。今回の声明は、F2のポイントリーダーであるアレックス・ダンに対する誹謗中傷に対する明確な姿勢を示すものと見られる。モナコのスプリントレースでは、ダンがスタート直後にビクター・マルタンスと接触し、大規模な多重クラッシュの引き金を引いた。これにより、複数のドライバーが1周を終える前にリタイアする事態となった。ダンはスペインでメディアに対し、次のように語っている。「モナコのあと、本当にたくさんのコメントをもらった。普段はそういうのを読んでも気にしない方だけど、レースの1時間後にはもう、携帯からSNSを削除していた」「人生であれほど酷いメッセージを受け取ったことはない。本当にひどくて、正直とても傷ついた」残念ながら、2025年シーズンにSNS上で誹謗中傷の標的となっているのはダンだけではない。F1ドライバーの角田裕毅や、ルーキーのフランコ・コラピントもまたSNS上での標的となった。これを受けて、FIA会長モハメド・ビン・スライエムは自身のSNSを通じて両者への中傷を非難している。さらに、元アルピーヌF1ドライバーのジャック・ドゥーハンも、父親がインスタグラムに投稿したとされる偽のスクリーンショットが拡散されたことにより、「家族への嫌がらせをやめてほしい」と訴える事態に発展した。偽のスクリーンショットには、ドゥーハンの後任であるフランコ・コラピントがグラベルにスタックしている場面とともに、「very impressive(笑)」という皮肉なキャプションが添えられていたが、実際の投稿ではドゥーハンのGPパフォーマンスを紹介するグラフィックが表示されていただけだった。また、スペインGP週末にはテレビ司会者のリー・マッケンジーが容姿に関する中傷の的となり、その後、自身が抱えていた健康上の問題を公表するに至った。FIAはこれらの件についてもUAOAキャンペーンを通じて言及しており、今回のダンの件でも同様に毅然とした対応を取っている。