スクーデリア・フェラーリは、F1において常にどのチームよりも大きな注目を集める存在だ。輝かしい歴史と、近年の不振が同居することで、議論や分析の格好の題材となってきた。とりわけプレシーズンは、次年度マシンの開発を巡る憶測が過熱しやすく、その騒音は一段と大きくなる。2023年には、フェラーリのCEOが新車を「スピードの面で前例がない」と評したこともあった。しかし、結果としてSF-23はレッドブルの独走を前に脇役に回ることになった。
こうした過去を踏まえ、スクーデリアは同じ物語が再び生まれることを避けたいと考えている。その点で、チーム代表のフレデリック・バスールは、すでに一定の手応えを感じているようだ。フェラーリは手の内を明かさない2026年レギュレーションの複雑さと、24戦という過密日程を考えれば、オフシーズンがこれまで以上に短く感じられるのも無理はない。実際、アウディは、すでにバルセロナで2026年仕様車の200kmのフィルミングデーを実施し、最初のプレシーズンテストに向けて動き出している。シーズン最終戦からわずか1か月余りで、新規定に向けた評価材料は山積みだ。今後数週間でマシン発表やシェイクダウンが相次げば、さらに多くの話題が表に出てくるだろう。この冬、最も注目を集めてきたのはメルセデスだ。2025年シーズンが終わる前から、同社のパワーユニットが2026年の基準になるとの見方が広がっていた。圧縮比に関する工夫が明らかになったことで、その評価は一層強まっている。FIAが現時点では合法と判断しているこの解釈が、メルセデス有利という物語を補強しているのは確かだ。もっとも、その真偽がどうであれ、フェラーリにとっては大きな問題ではない。バスールは、見出しに頻繁に登場するよりも、静かに見過ごされる立場を好んでいる。「来年は、シーズン最初の写真がすべてを決めるわけではない」とバスールはAutosportに語っている。「オーストラリアの結果だけで判断することにはならない。重要なのは、いかに迅速に開発できるかだ。開幕戦で1位でも10位でも、シーズンはそこで終わるわけではない。誰にとっても、ゴールまでは長い道のりになる」原則を貫くフェラーリ2026年に向けた舞台裏の進捗も、少しずつ明らかになりつつある。たとえばレッドブル・レーシングは、テスト段階から極めて攻撃的なアプローチを取ると見られている。他チームが慎重に基礎固めを進め、初期テストには簡素な仕様を持ち込む可能性が高い中で、レッドブルは対照的な道を選ぶ構えだ。もっとも、信頼性やファクトリーとサーキットの相関を確立する必要がある点は同じであり、そのリスクは小さくない。それでも、比較的完成度の高い2026年マシンをバルセロナで投入するとの見方が強い。早い段階で賭けに出ることで、後続アップデートを加速させる狙いだ。一方、バスールの発言からは、フェラーリがテストで性急な判断を下すつもりがないことがうかがえる。57歳の指揮官は、開発計画を描くうえで予算配分の重要性を強調する。「もし最初の数戦で4つや5つのアップデートを投入したらどうなるか」とバスールはガゼッタ・デロ・スポルトに語った。「たとえば日本や中国のような遠方のレースに新しいフロアを送るだけで、序盤に開発予算の半分を使い切ってしまう可能性がある。だからこそ、現状を見極めながら段階的に判断することが重要だ。メルボルンで先頭に立ったチームが、必ずしもシーズンを制するとは限らない」過去の失敗を繰り返さないためにフェラーリは、シーズン序盤の結果がいかに当てにならないかを、誰よりも理解しているチームだ。2022年の新規定初年度、マラネロのチームは開幕から好調で、シャルル・ルクレールが最初の3戦で2勝と2位を記録した。一方で、マックス・フェルスタッペンはバーレーンとオーストラリアでリタイアを喫していた。しかし数か月後、レッドブルは開発競争でフェラーリを上回り、信頼性問題も解消したのに対し、フェラーリはスペインやバクーで痛恨のリタイアを重ねることになる。さらに、近年のレギュレーションは、誤ったコンセプトを追い続ける代償の大きさも示してきた。2022年のメルセデス、2023年のアストンマーティン、そして2024年のレッドブルはいずれも、方向性を誤ったアップデートに資源を浪費した例として語られている。フェラーリ自身も、2024年ヨーロッパラウンドで投入したスペインGPのアップデートが、シーズンの流れを狂わせた。今後12か月で同じ轍を踏まないためにも、バスールが慎重な姿勢を取るのは自然な判断と言える。残る問いは、マラネロのファクトリーで築かれている基礎が、果たして十分に強固なものかどうかだ。