2026年F1シーズン序盤で顕在化したパワーユニットの構造的課題を受け、FIA、F1委員会、各メーカーはマイアミGPを前に協議を開始する。焦点は、エネルギー回生と出力制御がもたらす“競技性の歪み”と“安全性リスク”の是正にある。技術アナリストのパオロ・フィリセッティは、現行システムの問題点とともに、短期・中長期それぞれで実行可能な修正案を提示した。
エネルギー制御が生む「競技性の崩壊」現行の2026年F1パワーユニットは、電動と内燃の出力比率が50:50に設定され、エネルギー管理が競技の中心に置かれている。その結果として顕在化したのが「スーパークラッピング」と呼ばれる現象だ。これは回生を優先するために意図的に出力を制限する制御であり、特に予選において本来のパフォーマンスを大きく歪めている。さらに決勝でも影響は深刻で、充電フェーズとデプロイフェーズの差によってストレート上で極端な速度差が発生する。オリバー・ベアマンとフランコ・コラピントの接触事例が示したように、この速度差は単なる競技上の問題にとどまらず、安全性リスクへと直結している。短期対策の中核は「回生エネルギー制限」フィリセッティが最も即効性が高いと指摘するのが、1周あたりの回生エネルギー量(MJ)の削減である。現行の最大回生量を5MJ程度まで引き下げることで、ストレートでの過度な出力制限を回避し、トップスピードのばらつきを抑制できる可能性がある。これはレギュレーションの枠内で比較的迅速に適用できる数少ない手段であり、競技性と安全性の両面に直接的な改善効果が期待される。ICE側の補完的強化とその制約一方で、内燃エンジン(ICE)の出力を補完的に引き上げる案も検討されている。具体的には、燃料の発熱量向上、点火タイミングの調整、ターボ圧の引き上げなどが挙げられる。しかしこれらは信頼性や耐久性への影響が大きく、シーズン中の導入には慎重な検証が不可欠となる。そのため短期的には、回生量の削減と燃料特性の見直しを組み合わせるアプローチが、最も現実的な解決策と位置付けられる。50:50配分の限界と設計思想の再検討今回の問題の根底には、電動と内燃を完全に均等化した現行の出力配分がある。エネルギー依存度の高さが、ドライバーの裁量よりもソフトウェア制御を優先する状況を生み、結果として「レースの主役」が変質している。フィリセッティは中長期的な方向性として、出力配分を60:40(ICE優位)へ見直す案を提示する。これにより電動化の理念を維持しつつも、ドライバー主導のパフォーマンスを取り戻すバランスが確保される可能性がある。2026年F1は“調整フェーズ”にある2026年F1レギュレーションは持続可能性と技術革新を重視した大転換である一方、その実戦適応には想定以上の課題が露呈している。現在進められている議論は単なる微調整ではなく、「エネルギー主導型レース」という設計思想そのものの再定義に踏み込む可能性を持つ。今後の決定は、F1が技術主導の競技として進化するのか、それともドライバー主体の競技性へと軌道修正するのか、その分岐点となる。