3月20日にバーレーンGPで開幕する2022年のF1世界選手権に向けて、ブレンボはF1グランプリとの結びつきを一段と強固にした。ブレーキ技術の開発で業界をリードするブレンボは、過去47年にわたるF1マシンへの製品供給を通じて27回のドライバーズチャンピオン、31回のコンストラクターズチャンピオン、463回の優勝を支えた膨大な実績を生かし、今シーズンはチームごとにブレーキシステムをカスタマイズした。
大半のマシンには油圧系統(キャリパー、マスターシリンダー、バイワイヤユニット)や摩擦材(カーボンディスク、ブレーキパッド)も供給する。2022 F1マシン用の新たなブレーキシステム2022年のF1では、ブレンボのブレーキシステムが重要な役割を果たすことになる。ブレンボの技術者らが開発したブレーキシステムは、トップクラスの性能は維持しつつFIAの最新レギュレーションと制限に準拠した、全く新しいものに仕上がっている。新たなレギュレーションではタイヤサイズが13インチから18インチに変更され、ブレーキディスクのサイズも上がりった。ブレンボが2022シーズンに供給するカーボンディスクは、フロント用は径278mmを328mmまで上げ、厚さは従来と同じ32mm。リア用は266mmから280mmになり、厚さも28mmから32mmに上がっている。キャリパーとブレーキパッドの位置も設計し直した。大幅な変更は「規定パーツ」であり、全マシン同一が求められるフロントウィングにも。この変更を利用したマシンの空力負荷向上やブレーキシステムの空冷が制限された。ブレーキディスクのデザインに影響する規定もある。ブレーキディスクの孔は2021年までは直径2.5mmで1,480個が上限だった。今シーズンはフロントが1,000個から1,100個までに減り、リアも以前の1,050個から900個に減った。直径も変更されて3mm以上となった。つまり、ブレーキディスクは厚さが従来と同じである一方、孔は大きくなり個数が減るため、空冷性は下がる。多孔タイプのブレーキパッドも今シーズンは禁止されたため、ブレンボからは2種類のセッティングを選択肢としてチームに提供する。重量については、2022年のブレーキシステムは前シーズンと比較してタイヤ1本あたり約700g、マシンの総重量では約3kg増えた。全チームがブレンボグループのキャリパーを採用2022年、ブレンボはまたひとつ歴史的なシーズンを迎えることになった。参戦10チームすべてにキャリパーを供給するのは1975年以来初めて。ブレンボ製キャリパーを9チームに供給し、残り1チームにはブレンボグループのブランドであるイギリスのコヴェントリーに本社を置くAPレーシングがキャリパーを供給する。F1ドライバー全20名とも、ニッケルメッキ仕上げの新型モノブロックキャリパーを使用。ピストン数はレギュレーションで認められている最大数の6ピストン。ブレンボとAPレーシングが開発した、ブロントとリア間で制動力のバランスを調整するリアブレーキ用バイワイヤユニットも、5つのチームが採用する。カスタマイズ、テレメトリー、メンテナンスセッティングは各マシンで異なる。剛性より軽量性を求めるチームもあれば、重くても剛性を優先するチームもある。ブレンボグループのエンジニアは各チームと協同して、マシンごとに重量と剛性のベストバランスを割り出し、それぞれに最適なブレーキキャリパーに仕上げた。ホイール内のセンサーを通じてブレーキディスクとキャリパーの温度を各チームが常に把握できるため、チームもドライバーもマシンのブレーキ性能を管理し、最大限に発揮させることができる。2022年のレギュレーションについて2022シーズンのレギュレーションで最も大きく変わった点のうち、外見からわかりにくい箇所、フロア下に影響するものがあります。段差(「ステップドボトム」)をなくし、代わりにダウンフォースを発生しやすくするベンチュリトンネルを2本設けることで、マシンが発生させる乱気流の影響を後続マシンが受けにくくなり、結果的にオーバーテイクを狙うマシンがより至近距離でしぶとくチャンスをうかがえるようになる。2021シーズンまで認められていた空力は、バージボードを含めて全面的に廃止。これを受けてウィングは簡素化され新しい外観になった。タイヤにも重要な変更が加わっています。低扁平化でホイール径が大きくなり、ホイールカバーも導入される。タイヤに関しては公道仕様のスポーツカーのような、より硬いコンパウンドになった。これらの新たなレギュレーションと扁平タイヤの導入によって、各チームはサスペンションの見直しを迫られた。これらの対応を、各チームは2022シーズンのチーム予算1億4,000万ドル内で行った。2021シーズンの1億4,500万ドルより減額となっている。チームが要望すれば、ダイナミックエアインテーク、エンジンカバー、ウィングプロファイルなどはさらにカスタマイズが可能。2022シーズンではマシン重量が昨シーズンの752kgから795kgに増えている。車重増加に加え空力も新しくなったことで、どのサーキットでもドライバーは、過去のシーズンとは違うブレーキングポイントをいかに早くつかめるかが問われそうだ。