ブリヂストンの浜島裕英が、2009年のF1第6戦 モナコGPの展望をタイヤサプライヤーの立場から語った。ブリヂストンは、2009年F1のタイヤ配分において連続的なレンジではないコンパウンドを組み合わせる方針を採っているが、シーズン中最も滑りやすいモナコGPのコースでは、例外的にソフトとスーパーソフトタイヤを用意する。全長3.34kmのモンテカルロのコースは比較的短いものの、ほとんどストレートがなく、周囲をバリアに囲まれたコーナーが果てしなく続くように見える。さらに、年間を通じて一般の車道として使用されているため路面...
ソフト、スーパーソフトのいずれのコンパウンドもブリヂストンF1タイヤの中でも低温から機能するレンジであるため、短時間で温まる。またウエットタイヤは、モナコでこれまでよりもソフトなコンパウンドを使用したインターミディエイトタイヤを導入する。このタイヤはウェットコンディション下で高いグリップ力を発揮するよう設計され、モナコGP以降今シーズンの最終戦まで使用する予定である。アクシデントが多発した昨シーズンのモナコGPでは、ルイス・ハミルトンがウェット(現インターミディエイト)と溝付きソフトタイヤを使用して優勝した。浜島裕英 (ブリヂストンMS・MCタイヤ開発本部長)モナコの課題は何か?「モナコの一般道でグリップ力を高めることが大きな課題になるでしょう。このコースは大変面白いコースです。一般道を使うためいろいろな標識があり、路面の状況も場所によって異なります。また注目点として挙げられるのは、金曜日にF1マシンが走らないので、木曜日から土曜日にかけて路面状況がかなり変化してしまう可能性があることです。レースが実施されていないときは一般の車や人々がコースを使用します。こうした理由からラバーがのりにくく、路面が再び汚れてしまうことになります。つまりレースに向けて路面状況が改善されにくいコースなのです。」新しいインターミディエイトタイヤはどのように違うのか? 「新しいインターミディエイトは、これまでのインターミディエイトよりもソフトなコンパウンドを採用することにより、グリップ力を高めています。しかしウェットコンディション下で最新スペックのF1マシンを走らせることは、どのタイヤを使用していても常に課題になるでしょう。最新型のマシンはダウンフォースが低いので、エアロダイナミクスから得られるグリップ力が以前よりも少なくなっています。これはウェット、ドライ、いずれのコンディションにも当てはまることです。ただドライでは、去年の溝付きタイヤよりも今年のスリックタイヤのほうがグリップ力は高く、エアロダイナミクスで得られるグリップ力の減少を補うメカニカルグリップがあるため、あまり問題にはなりません。しかしウェットでは、私たちの最新のインターミディエイトタイヤであっても、以前よりもややグリップ力が高いという程度でしかありません。ウェットコンディション下のアクアプレーニングを防ぐため、トレッドに排水用の溝を付ける必要があるからです。そのため、新しいコンパウンドを開発することによりグリップ力の改善を図る方法しかないのが現状です。」浜島裕英のF1 モナコGP 解説2009年のタイヤ配分は、「ソフトとハード」「スーパーソフトとミディアム」のように、連続しないスペックを組み合わせてきましたが、ここモナコでは、例外的に「スーパーソフトとソフト」という、隣り合ったスペックを用意します。しかし、SSとSの組み合わせでも、モナコにはちょっと硬すぎる可能性があります。ローワーキングレンジとはいえ、ソフト側を上手く使うことが重要でしょう。昨年はSが丁度良く、SSを使うのは怖いと言っていたドライバーもいましたが、今年はSSが丁度良くて、Sは硬すぎるということが考えられるわけです。だからこのモナコのような路面のミューが極端に低いコースは、ハード側をどう使うか、上手く選択することが重要ですね。いずれにしても、このコースは前のクルマを抜けません。注目はポルティエ8とカジノスクエア4ですね。開催日程:2009年 F1 モナコGP