アストンマーティンはF1界で最も成功した技術者であるエイドリアン・ニューウェイを迎え入れ、新チームで2026年の革新的なレギュレーションに向けて全力で取り組んでいる。ニューウェイは2024年5月にレッドブルのチーフ・テクニカル・オフィサーを退任し、今年初めにアストンマーティンのマネージング・テクニカル・パートナーに就任。
2025年型のAMR25は今季大きな競争力を示せていないが、短期的な改良の性質からニューウェイの能力は2026年から導入される新レギュレーションの開発に集中されている。F1は現在のグラウンドエフェクトカーから、現代版のアクティブエアロダイナミクスへと移行する。ニューウェイはレギュレーション変更を的確に攻略してきた経歴を持つ。1998年のマクラーレンMP4/13はシーズン序盤を支配し、2009年のレッドブルRB5はタイトルを獲得したブラウンGPのマシンをシーズン終盤には凌駕、その後の4年間で全タイトルを独占した。さらに30年以上前、1992年にはナイジェル・マンセルをドライバーズチャンピオンに導いた、洗練されたアクティブエアロを備えるウィリアムズFW14Bのチーフデザイナーでもあった。ここ数年、元ジョーダン/フォースインディアのチームであるアストンマーティンは、ローレンス・ストロールの巨額投資と設備刷新を経て、投資の成果を求める段階に差しかかっている。2025年にチーム代表へ就任したアンディ・コーウェルは、5年間の休養を経てストロールのプロジェクトの力に惹かれ、復帰を決断した。エンジニアとしても成功を収めたコーウェルは、アストンマーティンの空力設計部門に高まる熱気を感じていると語る。数カ月前に稼働を開始したばかりの新風洞には、多くの異なるデザインが持ち込まれているという。「みんな新しく、より冒険的なコンポーネントの開発を楽しんでいる。風洞チームはニューウェイの加入に非常に大きく反応しており、通常よりも大きな変更を加えたモデルで、さまざまなアーキテクチャ案を試している」とコーウェルはハンガリーGP期間中のPlanetF1.comとのインタビューで語った。「エイドリアンの図面が描かれてから風洞で試験するまでの時間は、以前の3分の1になった。スタッフと話せば、みんなそれを楽しんでいて、異なることに取り組むことを喜んでいる。進歩のために戦場に立っているような感覚を味わっているんだ」ニューウェイがAMR26に影響を及ぼし始める中、コーウェルは現段階でアストンマーティンの立ち位置を競合と比較する術はないと認める。シャシーや空力、パワーユニットに関するレギュレーションが一新されるため、現時点では目安となる基準が存在しないのだ。「我々は開幕戦に向けて自分たちのレースを進めることに集中している。これは我々にとって挑戦的な旅だ」とコーウェル。「ホンダとの初の協業であり、エイドリアンは過去にホンダと仕事をした経験がある。アラムコとの燃料・潤滑油の開発、独自のトランスミッションや油圧系も含め、多くの新しい関係や技術に取り組まなければならない。空力レギュレーションの変更も加わり、非常に多くの重要要素を同時に進めている。我々は厳しい目標を設定している」「厳しい目標を立てれば、達成するために最後まで戦うことになる。もし最後まで戦わずに達成できるなら、それは目標が甘すぎるということだ。我々は情報のリリース期限を守るために戦っている」「我々にはマシンの多くを社内製造できる優れたオペレーション部門があり、また複雑さが増し、リードタイムが短く、品質と精度の向上を求められる部品を作るための要求に応える素晴らしいサプライチェーンもある。全社的に見ても、これは本当にエキサイティングな旅だ」