フェルナンド・アロンソは、2025年MotoGP王者に輝いた同郷のマルク・マルケスを「例外的な存在」と称え、自身のキャリアとも重ね合わせながら、その精神力と復活劇を高く評価した。2025年シーズン、マルク・マルケスはファクトリーのドゥカティに昇格すると選手権を支配した。2020年ヘレスでの事故により肩に深刻な負傷を負って以降、長い低迷期を経ての大逆転だった。
才能だけでは足りない──アロンソの賛辞スペインの放送局DAZN制作のドキュメンタリーで、フェルナンド・アロンソはマルケスのメンタリティを次のように語った。「ドライバーとしての生まれ持った才能に加えて、並外れた精神力と規律が必要だ。5年間タイトルを獲れなくても、決意や闘争心、そして才能を一切失わない。それは“普通”ではない。世界王者の自分をさらに改善し続ける規律を頭に入れることは本当に難しい。今年マルクが成し遂げたことは、ごく少数の人間にしか届かない領域だ。」それぞれの低迷と決断マルケスはホンダで苦闘が続いた後、2024年にサテライトのグレシーニへ移籍する大胆な決断を下した。この選択は即座に結果を生み、勝利への復帰と2025年のファクトリー昇格につながった。一方のアロンソも、マクラーレン時代の不遇を経て一度F1を離脱した。2021年にアルピーヌで復帰し、2023年からアストンマーティンに移籍したが、勝利を争えるマシンには恵まれていない。2005年と2006年にルノーで連続王者に輝いて以来、グランプリ勝利からは12年遠ざかっている。勝てない時間に向き合うということアロンソは、トップに立てない期間にモチベーションを保つ難しさを率直に明かした。「しばらく勝てない、あるいは適切な装備がないときは、家で何度も自分と対話する必要がある。毎日起きて、ジムに行き、バイクに乗ってトレーニングする。何時間も一人で走りながら、自分自身と話し続ける。シャワーを浴び、傷や打撲を見て、過去の映像を見返しながら、いま結果を出せていなくても自分はまだあの人間だと思い出すんだ。」復帰の難しさと二度目の成功自身のF1復帰時を振り返り、アロンソは感覚のリセットがいかに厳しいかを説明した。「復帰後最初のテストでは、2年前と同じパフォーマンスを出せていると思ったが、ストップウォッチは数コンマ遅いと言っていた。限界まで攻めているのに、その差をどう埋めるか分からない。休むと、身体や脳、感覚がもう一度目を覚ます必要がある。外からは簡単に見えることでも、実際はまったく違う。二度目に成功する道のりは、最初とは大きく異なる。」勝利の重みが変わる瞬間2023年にアストンマーティンで8度の表彰台を獲得した経験を引き合いに、アロンソは喜びの質の変化を語った。「8回の表彰台で勝利はなかったが、あれは爆発的な喜びだった。写真を見ると、1位や2位のドライバーは半分の喜びで、3位の僕は有頂天だ。MotoGPでも同じだ。タイトル争いの重圧を背負うライダーたちの横で、勝たなくてもマルクは心から喜んでいた。そういう楽しみ方に変わるんだ。」長い逆境を越えて再び頂点に立ったマルク・マルケス。その姿はアロンソ自身の歩みと重なり、トップアスリートにしか分からない復活の価値を浮き彫りにしている。