レッドブル・レーシング内部で、角田裕毅の去就を巡る意見の食い違いが表面化していると報じられている。チーム代表ローラン・メキースは角田裕毅の残留を強く支持する一方、モータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコはアイザック・ハジャーの昇格を推進しており、判断は最終戦アブダビGP後に持ち越される見通しだ。
レッドブル首脳陣の意見が分かれる中で迎える正念場角田裕毅は、今後数週間が自身のF1キャリアを左右する極めて重要な時期になることを理解している。レッドブルは長年にわたり「セカンドドライバー問題」の解決に苦心しており、マックス・フェルスタッペンが2016年に昇格して以来、ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレスらがいずれもチームメイトとして結果を残せずに離脱してきた。2025年シーズン序盤、リアム・ローソンがわずか2戦で降格し、角田裕毅が昇格。しかし現状では十分な成果を挙げられず、ドライバーズランキング17位にとどまっている。今季限りで角田裕毅とローソンの契約はいずれも満了となる。メキースは角田裕毅を支持、マルコはハジャー昇格を主張報道によれば、ローラン・メキースは依然として角田裕毅の残留を強く支持しており、就任直後にはフェルスタッペンと同仕様のマシンを彼に与えたという。これは前任体制では実現しなかった措置だ。一方で、ヘルムート・マルコは育成プログラムの刷新を進める立場を取っており、アイザック・ハジャーのレッドブル昇格、そしてアービッド・リンドブラッドのレーシングブルズ起用を推している。マルコはメキシコGP後、『ServusTV』に対し「内部で協議した結果、今はタイトル争いに集中することに決めた」と発言。さらに「ドライバーの決定はドーハ(カタール)かアブダビ以降に延期する」と明かした。角田裕毅のメキシコGP、ペース光るもピットストップに泣くメキシコGPでは角田裕毅が一時4番手を走行しながらも、最終的に11位でフィニッシュ。ポイントには届かなかったが、フェルスタッペンとの差は今季最小で、単独の速さは評価された。ローラン・メキースはレース後、「今日の角田のペースは非常に速かった。特にミディアムタイヤでの第1スティントは印象的だった」とコメント。しかし「残念ながらピットストップで少し時間を失ってしまった。我々のピットクルーは非常に優秀だから、こうしたことは通常起きない」と語った。角田裕毅の未来を決めるのは“パフォーマンス”か“政治”か現在、レッドブルはフェルスタッペンのタイトル争いを最優先にしており、ドライバー決定の発表は最終戦後に先送りされている。しかし、メキースとマルコの意見対立が明確になったことで、角田裕毅の将来は単なるパフォーマンス評価を超えた「組織の方向性」を映す鏡となっている。メキースは、角田裕毅を“フェルスタッペン体制の安定要素”と見ている。今季中盤以降、技術的な一貫性とフィードバック能力の向上を評価し、チーム運営の成熟を重視する姿勢を崩していない。対してマルコは、レッドブル・ジュニアプログラムの長期戦略を優先し、ハジャーやリンドブラッドら若手を早期にトップカテゴリーへ昇格させる方針を掲げている。彼にとって角田裕毅は「一定の成果を示したが次の段階に進むべき」存在と位置付けられている。こうした対立は、単にドライバー評価の差ではなく、チーム哲学の分岐点を示している。メキースは現場主導の技術安定化を重視し、マルコは育成階層の循環と若返りを志向。レッドブル・グループが2026年の新レギュレーション下でどちらの価値観を優先するかが、角田裕毅の命運を左右する。仮にハジャー昇格が実現すれば、角田裕毅はレーシングブルズへの“再配置”が最有力とみられるが、そこにもリンドブラッドという次世代の台頭が控えており、状況は一層流動的だ。ドーハとアブダビの残り2戦は、角田裕毅が自身の将来をコース上の結果で証明できる最後のチャンスとなる。
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