角田裕毅にとって、2025年は再び試される年となった。レッドブルF1は開幕2戦でリアム・ローソンを起用したものの、期待された結果が得られず、角田が急遽セカンドシートに復帰。しかし、イモラでの復帰戦では予選でクラッシュを喫し、決勝も10位と厳しい結果に終わった。そんな角田の苦戦を、元レッドブルF1ドライバーであるダニール・クビアトは決して他人事とは思っていない。
クビアト自身も2015年から2016年にかけてレッドブルに在籍し、マックス・フェルスタッペンにシートを譲るかたちでチームを去った過去を持つ。そのフェルスタッペンは2021年から4年連続でタイトルを獲得。2025年シーズンも2勝を挙げており、直近のエミリア・ロマーニャGPでは圧巻のパフォーマンスで優勝を飾った。一方、レッドブルのRB21はその速さとは裏腹に、扱いの難しさが目立つマシンでもある。クビアトはこのマシン特性こそが、角田裕毅や過去のチームメイトたちが苦戦してきた最大の要因だと見ている。「レッドブルは今も速いクルマを持っている。ただ、そのマシンは非常に狭い作動ウィンドウでしか性能を発揮しない。経験豊富なドライバーやエンジニアであれば、そのウィンドウにマシンを収めて速さを引き出せるが、そうでなければ一気に後れを取る」ダニール・クビアト、イモラのパドックでレーシングブルズF1代表ローラン・メキースと会話さらにクビアトは、マシンの持つ挙動の繊細さが、安定したパフォーマンスを阻む要因になっていると語る。「予選では新品タイヤのグリップで差が隠れてしまうこともある。だが、例えばマイアミではマクラーレンがレース中ずっと安定したトラクションとタイヤマネジメントを見せていた。こういう細かい部分の積み重ねが、このレベルでは決定的な差になる」RB21がフェルスタッペンに特化した“専用マシン”ではないかという指摘についても、クビアトは一定の理解を示す。「それはあり得るし、むしろ論理的だと思う。でもF1マシンというのは極めて複雑なもので、タイヤ温度、空力的な作動域、セットアップ…どれかひとつでも噛み合わなければ、結果は大きく崩れる」「いいドライバーでも、そのウィンドウを外すとコンマ5秒は簡単に失う。F1の初期には私自身もそれで苦労した。だからこそ、角田やペレスのようなドライバーでも苦戦しているのだと思う。自分があのマシンを運転したわけではないから断言はできないけれど、要因はそこにあるはずだ」フェルスタッペン、2025年エミリア・ロマーニャGPで見事な勝利。今季2勝目レッドブルは現在、フェルスタッペンとその技術陣が一枚岩として機能する一方で、もう一方の側、すなわちセカンドドライバーを巡る状況は不安定なままだ。これについてもクビアトは率直に語る。「難しい判断だと思う。チームが何をベストと考えるかによる。ただ、チームの一部、マックスと彼のクルーは完璧に機能しているように見える。でももう一方の側は、すべてが少しずつ噛み合っていないように見える」「詳細までは分からない。チームの中にいるわけではないから。ただひとつ言えるのは、正しく機能すれば、このクルマは速いということ。なぜそれをできないのかは、また別の問題だ」与えられたチャンスを生かせるか、それとも飲み込まれるか――角田裕毅が直面しているのは、単なる“チーム内競争”ではない。RB21というマシンが突きつける構造的な壁とどう向き合うか、その答えが彼の今後を決める。クビアトの言葉は、その厳しさを明確に示している。
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