マックス・フェルスタッペンとメルセデスF1が水面下で接触していることが明らかになり、F1パドックに衝撃が走った。だが、これが即座の移籍を意味するわけではなく、背景にはさらに複雑な意図があると考えられている。メルセデスが2026年に向けて電撃的な移籍を狙っているのか、それとも2027年以降を見据えた長期的な駆け引きなのか――あるいは単に交渉力を高めるための戦略的行動なのか。F1の内情に精通する情報筋の話をもとに、その真意を読み解く。
主導権を握っているのはフェルスタッペン側?今回の交渉が注目を集める理由のひとつは、メルセデスのトト・ヴォルフ代表が今年4月には「マックスとは話していない。今のラインアップに満足している」と明言していたからだ。だが、最新の情報ではフェルスタッペン陣営の側からメルセデスに接触した可能性が高いという。F1チーム代表として他のドライバーの動向を把握しておくのは当然であり、ヴォルフがこのアプローチに応じたこと自体に大きな意味はないと見る向きもある。とはいえ、ジョージ・ラッセルとの契約更新を控えるメルセデスにとって、フェルスタッペンという「最大級の交渉カード」がテーブルに上がること自体が、内部的な緊張感を生んでいるのは間違いない。鍵を握るのは2026年のパワーユニット今回の駆け引きの裏には、2026年のF1大改革がある。レッドブルはこの年から自社製パワーユニットを投入するが、その性能は未知数だ。一方で、パドック内ではメルセデスのエンジンが最も期待されているとの声もある。フェルスタッペンがもし2026年に現チームが競争力を失うと判断した場合、他チームへの移籍や別カテゴリー参戦といった選択肢も視野に入る。そのため2026年は現状維持しつつ、2027年に向けて自由な立場を確保するというのが、最も現実的なシナリオとされている。不満と「けん制」のバランスレッドブルの現状にもフェルスタッペンは満足していない。マクラーレンに対抗できる見通しは立っておらず、「チームは100%頑張っているが、それだけで十分か分からない」とコメント。マネージャーのレイモンド・フェルムーレンも、オーストリアGP期間中にレッドブルの首脳陣と立て続けに話し合う姿が目撃されている。これは単なる技術面の相談ではなく、レッドブルに改善を迫る政治的メッセージとも捉えられる。極秘プラン「2026年のサバティカル」説も浮上さらに一部では、フェルスタッペンが2026年にF1を一時離脱する可能性も取り沙汰されている。長年のF1キャリアに加え、父親になったばかりであることや、耐久レースへの興味が高まっていることが理由として挙げられている。本人はスパ24時間耐久レースへの参加を優先し、『F1/エフワン』の映画プレミアには姿を見せなかった。また、オーストリアGPの後も「レースはあまり見ていなかった。スパ24時間を観ていた」と語っており、F1以外への興味が高まっている兆しは確かにある。契約解除条項とタイムリミットフェルスタッペンの契約は2028年までとされているが、一定条件を満たせば途中解除できる「パフォーマンス条項」が存在するという説が有力だ。有力な条件としては「7月末時点でドライバーズ選手権3位未満であること」だが、現在フェルスタッペンは3位。ラッセルが追い抜くか否かでこの条項が発動される可能性がある。とはいえ、仮に条項が発動されても実際に離脱するかはフェルスタッペン自身の判断次第。逆にレッドブルにさらなる条件を引き出す材料として使われる可能性もある。メルセデスはラッセル残留へ、ただし「保険」は確保一方のメルセデス側は、トト・ヴォルフが「ドライバーを長く待たせるようなことはしない」と語るように、夏休み(8月)前には2026年のラインアップを確定させる意向だ。ラッセル残留が濃厚と見られているが、2027年のフェルスタッペン獲得に向けた布石は維持される見込みだ。ヴォルフは「全ての関係者に敬意を持って対応する必要がある」と語り、ラッセルにも情報を共有しながら、裏で動くつもりはないことを強調している。結論:移籍話は「けん制」と「布石」、決断は2026年の情勢次第現在のフェルスタッペン=メルセデス交渉は、即時的な移籍ではなく、2027年を見据えたポジション取りと、現チームへの圧力としての意味合いが強い。F1の将来像は2026年の新ルール施行で大きく変わる。そこに向けて、フェルスタッペンは“今すぐ動く”のではなく、“動ける状態にしておく”戦略を取っていると言えるだろう。今後の鍵は、夏休み前の成績、2026年の勢力図、そしてフェルスタッペン自身の人生観。数カ月後には、新たなドラマの幕が上がるかもしれない。
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