トヨタは、今月開催の北米国際自動車ショーにおいて、米Kymeta社がもつ衛星通信技術を活用した、燃料電池自動車「MIRAI」の実験車を参考出展した。トヨタは、車載通信機(データ・コミュニケーション・モジュール)の搭載率を今後高めていくなど、クルマの「つながる」化に向けて取り組みを進めており、将来的には、大容量でデータ転送速度に優れた衛星通信の活用も視野に入れている。
衛星通信には、?車両へ大量のデータを配信できる、?カバーエリアが広く、グローバルに国や地域をまたいで同規格のもと「つながる」クルマを展開できる、?天災等の緊急時でも、より安定した通信が確保できる、などの大きなメリットがある。従来の衛星通信アンテナは衛星を捕捉するため、パラボラアンテナのような曲面の形をとるものが通常だが、Kymeta社は液晶技術とソフトウェアを用いることで、こうした形状を要することなく、電子的に衛星を補足できる独自技術を有している。そのため、アンテナを平面化、小型化し、車載に適したものにすることができる。トヨタは同社と2013年9月より、大量のデータを車両に衛星配信することを想定した車載用平面アンテナの共同研究を開始。現在は、自動車向けアンテナの開発・試験における独占権を得て、同社に試験車を貸与し、走行評価を実施している。今回参考出展した試作アンテナ搭載のMIRAIは、こうした衛星通信機能の車載に向けた取り組みの進捗を示すものである。なお、将来技術の研究開発を促進する観点から、本年1月、トヨタも出資する「未来創生ファンド」※3より、同社へ500万ドルの出資を実施している。トヨタとしても、出資により同社との共同研究がさらに加速することを期待している。トヨタの専務役員である友山茂樹は「トヨタは何年にもわたり、世界中の様々な企業を訪問するなど、新しい技術を探してきた。中でもKymeta社の平面型アンテナは、衛星通信技術を車載するにあたっての課題を解決する可能性を秘めており、非常に期待している」と述べた。Kymeta社のCEO(最高経営責任者)であるネイサン・クンツ(Nathan Kundtz)氏は「当社はこれまでに1万キロ以上も、衛星通信機能を備えたクルマの路上試験を実施しており、世界に先駆けて、車載に適した衛星通信アンテナを実現すべく、トヨタと協業できることを大変うれしく思う」と述べた。