トロロッソ・ホンダにとって歴史的快挙となったバーレーンに続く連戦の第3戦中国GP。厳しい戦いを強いられた上海での週末をチームスタッフが振り返った。第2戦バーレーンGPで4位初入賞を果たしたピエール・ガスリーは、第3戦中国GPでは注目のドライバーの一人となり、グランプリ週末前の木曜に行われるFIAプレスカンファレンスに招かれた。そして、この大会に向けて問われると、次のように語った。
「マシンのポテンシャル、セットアップ、タイヤといったものへの理解は深まっているが、それをレースの場でもっと確認する必要がある。僕らのマシンのベースラインを判断し、バーレーン以外のトラックでも同じパフォーマンスを出せるかどうかを確認する上で、今週末は絶好の機会になると思う」ピエール・ガスリーの言葉通り、トロロッソ・ホンダにとって中国GPは、前戦での好結果が本物か否か、その真価が問われる一戦だった。他チームや他ドライバーからも、トロロッソ・ホンダのバーレーンでの活躍を賞賛する声が多数上がったが、共通していたのは「バーレーンのコースは、トロロッソ・ホンダの得意なコースであった」ということだ。F1マシンのパフォーマンスは、その設計思想や戦略によって、それぞれ長所短所が必ず存在する。車体自体の構造、つまりホイールベースや重量バランス、サスペンション性能などにより、メカニカルグリップ(ダウンフォース以外で得られるグリップ)に違いが表れる。それに加えて空力パーツ、パワーユニット、タイヤなどの要素が組み合わされ、それらすべてが複雑かつ微妙にマシンのパフォーマンスを左右する。実際にシーズンが始まると、それぞれのサーキットレイアウトの特徴に対して、複雑な構成要素により生み出されるダウンフォースとメカニカルグリップ、パワーユニット性能、そしてタイヤの使い方を適合させて、レースを戦うことになる。トロロッソ・ホンダのマシン『STR13』は、ダウンフォースを比較的抑えめにし、高速性能に勝る性格を持つと見られている。その性格に加え、複雑な要素が見事に噛み合ったのがバーレーンでのレースだったとすれば、今回、中国ではこのバランスに大きな狂いが生じたというほかない。金曜午前のFP1で初日の走行が始まると、トロロッソ・ホンダの2台は苦しんだ。そして、2日目、セッティングを変更して臨んだP3と予選ではさらにパフォーマンスを落とす結果となった。「予想していたより厳しい予選でした。このサーキットと我々のマシンの相性はあまりよくないようです。そして、昨日と今日の低い気温と風もマイナスでした。特にピエールは、マシンの扱いに苦労したようです。昨日の方がマシンのバランスはよく、競争力があったと感じています。決勝は気温も上がるようなので、今日の原因を突き止め、レースではよりパフォーマンスを見せたいと思います」と、チームのテクニカルディレクターであるジェームス・キーは語った。迎えた決勝レース。気温は上がり、風も前日と比べて弱まった。トラックコンディション回復に一縷の期待を持ったものの、マシンのパフォーマンスは改善しなかった。ガスリーとハートレーの2台が異なったタイヤでスタートし、それぞれ違う戦略でレースに臨んだが、それも功を奏せず、レース半ばにはドライバーとのコミュニケーションミスにより、チームメート同士が接触するという事態も起きてしまった。「想定よりも悪いパフォーマンスと結果でした」とホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治はレース後に語った。「結果としては残念でしたが、これですべてを失ったわけではありません。3戦が終わり、よかったこと悪かったことが両方あったわけで、なぜよかったのか、なぜ悪かったのかを解析する材料はあります。これも一歩一歩の一つだと考え、次に向けて備えるしかありません。トロロッソのトストさんも、次戦バクーまでに原因を解析するよう、チームに号令をかけていました。我々としては、パワーユニットには全く問題はなかったと認識していますが、これもこのあと、パワーユニットとデータを解析します」実際、バーレーンでの週末と比較すると、中国では『マシンにとって不得意なサーキット』だとしても大きすぎるパフォーマンスの落差が露呈した。ピエル・ガスリーの「クルマへの理解がまだまだ足りない」と言うコメントの通り、今回の原因特定はこれからの作業となる。大きな前進を感じさせたバーレーンから状況は一転したが、田辺豊治の「悪い部分が見えたと言う意味で、それを解析できれば一歩になると思う」という言葉の通り、経験を積んだというステップを勘案すればゼロに戻ったわけではない。一度の好調がそう簡単に続くわけではない、F1の難しさを思い知らされたレースだった。