レッドブル・レーシングの2023年のF1支配の功績の多くは、巧みなフロアとダウンウォッシュ・サイドポッドによって低ドラッグを実現した空力コンセプトに焦点が当てられている。しかし、RB19が優れていたのはダウンフォースのおかげだと考えるのは間違いだ。サスペンションがビークルダイナミクスに与える影響もまた、成功の重要な要素であったことを示す指摘は多い。
これは空力が重要ではなかったと言っているわけではなく、昨年レッドブルがこの分野でいかにトレンドセッターであったかが明らかになったからだ。それが特に顕著に表れたのが、フロアの裏側だった。ルイス・ハミルトンがモナコGPのプラクティスでクラッシュした後、メルセデスのフロアの下をのぞいたところ、2022年のレッドブルとの類似性が見られた。その後、セルジオ・ペレスがクラッシュし、アンダーボディのより複雑なプロファイルやフロア後方に向かうキックポイントなど、レッドブルがその間にフロアを大幅に開発したことを示した。しかし、違いがあったのはフロアだけではない。サイドポッドは現代のF1マシンの外観を決定付ける要素であるため、最も注目されるのはサイドポッドだ。このため、サスペンションの選択はやや見過ごされてきたが、それがクルマ全体のコンセプト、ひいては成功に果たす役割は軽視できない。この分野で最も大きな違いは、プルロッド式とプッシュロッド式のレイアウトの違いである。プルロッド式サスペンションでは、ロッドはシャシーの低い位置にあり、ホイールアッセンブリーの高い位置に接続されている。バンプや縁石の上では、ロッドがトーション・スプリングを引っ張る。プッシュロッド式はその正反対である。プッシュロッドは、すべての内部サスペンション部品とともにシャーシの高い位置にあり、ホイールアッセンブリーの低い位置まで斜めに伸びている。トラックに応じてホイールが動くと、スプリングはプッシュロッドに押されて圧縮される。そのため、クルマがバンプや縁石にぶつかると、ロッドはトーション・スプリングを引っ張る代わりに押す。現行のグランドエフェクト・レギュレーションが導入されたことで、マシン前部のプルロッドが復活した。F1のフロントサスペンションがプルロッド式になったのは2013年以来で、2014年から2021年まではプッシュロッド式が主流だった。プルロッドサスペンションとプッシュロッドサスペンションにはそれぞれ異なる長所と短所があり、その一因はサスペンションコンポーネントの重量がどこに配置されるかに関係している。プルロッドはシャシーの低い位置に配置されるため、重量配分に影響する。スプリングとダンパーがシャシーの低い位置にあるため、重心も低くなり、F1では有利とされている。一方、プッシュロッド式は一般的に実用的であり、シャシーの高い位置にあるスプリングやダンパーにアクセスしやすいため、メカニックにとっても使いやすいと考えられている。しかし、これらよりも重要なのは、サスペンションの選択が空力的な意味を持つということだ。サスペンション・パーツは空気の流れに直接あたるため、ベンチュリ・トンネルやサイドポッドの前方に空気を誘導する役割を果たす。これらの空力的な影響は、チームが異なる選択をし、理想的なサスペンション セットアップに関して異なる見解を持つ主な理由だ。つまり、サスペンションはマイン全体の空力コンセプトに適合する必要がある。テクニカルレギュレーションが導入された2022年初頭、レッドブルはプルロッド式フロントサスペンションとプッシュロッド式リヤサスペンションを選択し、マクラーレンと並んで目立つ存在となった。それはメルセデスやフェラーリなど他のチームが提示したものとは正反対であり、またそれまで主流と考えられていたものとも正反対だった。しかし、レッドブルでは、ベンチュリトンネルの開口部、フロアの下側、そして最初はRB18、そしてRB19の空力コンセプトと連動している。フロントのプルロッドは重心をできるだけ低くするのに役立ち、シャープなフロントエンドはフェルスタッペンが好むものだ。サスペンションの選択がマシン全体のコンセプトにとってどれほど重要だったかを尋ねられたテクニカルディレクターのピエール・ワシェは「マシンのコンセプトの大きな部分を占めているの確かだ。サスペンションの選択には複数の側面が影響する」とAutosportに語った。「マシンのダイナミクスに影響を与える側面があり、さらに別の方向のダイナミクス、そしてマシンの効率にも影響を及ぼす。しかし、重要な側面は、達成したい剛性を操作的に達成する能力だ」最後の側面は複雑だが重要だ。現在のグウランドエフェクトカーは、地面に近いところを安定して走る必要があるため、その性能を最大限に引き出すためには可能な限り剛性を高める必要がある。しかし、レギュレーション上、チームがスプリングで可能なことは限られている。ピエール・ワシェは「今回のレギュレーションでは、Jダンパー(イナーシャ)が取り除かれ、乗り心地は完全に変わった」と続けた。「今は普通の粘性ダンパーしかない。加速依存のダンピングはなく、速度依存のダンピングしかない」「サスペンションの選択は、よりソフトなスプリング、異なるタイプのレシオ、サスペンションの異なるモーションレシオなど、より自由度が高くなる」サスペンションの選択は、2022年以降のレギュレーションと相まって、クルマの走行剛性にも影響する。そして、フェルスタッペンが昨年何度も指摘したように、その剛性こそが非常に重要なのだ。グリッドを見渡して興味深い点の1つは、レッドブルがサスペンションレイアウトの選択においてほぼ例外的であり、フロントにプルロッド構成を採用しているのはマクラーレンだけだったということだ。そして、空力への波及効果は非常に重要であるため、これは最終的にマシンの残りの部分を決定する。ワシェも認めているように「(サスペンションを選択するとき、多かれ少なかれ、流れに乗るすべての面がエアロに影響を与える」したがって、サスペンションの選択は、サイドポッドやフロアのデザインに関してチームが何を望むかに強く依存する。これはフェルスタッペンが言ったことと完全に一致する。特定のコンポーネントをコピーしてもうまくいかない。マシンのリアでは、レッドブルは他の多くのチームとは異なり、プッシュロッドサスペンションを選択した。この選択もまた、さまざまな要素に左右される。まず、その哲...
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