2014年 第11戦 F1ハンガリーPが開催されるハンガロリンクをタイヤメーカーの観点から解説した。ピレリと各チームは、今シーズン唯一のヨーロッパでのグランプリ2週連続開催のため、ホッケンハイムからブダペストまで800kmの距離を移動する。ハンガロリンクは、1986年、かつての「鉄のカーテン」の向こう側で最初にF1が開催されたサーキット。
ハンガロリンクは常設サーキットだが、メカニカルグリップが強調されるタイトでツイスティなコーナーやグリップレベルの低い路面など、多くの市街地サーキットの特性を持ち合わせている。過去には、レースが非常に暑いコンディションで行われることが多いとはいえ、雨も不確定な要素となっている。ピレリは、P Zero ホワイト・ミディアムとP Zero イエロー・ソフトタイヤを持ち込む。この組み合わせは性能と高い気温への対応力との適正なバランスを提供する。ハンガロリンクは、特にタイヤに厳しいサーキットではないが、絶え間なくコーナーが続くコースのため、ラップを通してコンパウンドをクールダウンする機会があまり得られないという特徴を持っている。ハンガロリンクは、トラクション、ブレーキング、横方向の荷重がバランスより配置されたサーキット。マシンは、低速コーナーでメカニカルグリップを最大限に活用するために最大レベルのダウンフォースセットアップで走行する。ミディアムタイヤは作動温度領域が低く、広範囲の低い温度条件下でも最適な性能を発揮できるコンパウンド。ソフトタイヤは、対照的に作動温度領域が高く、高温のコンディションに適したコンパウンド。ハンガロリンクでの気温は、シーズン中で最も高い部類に入ることも珍しくない。ハンガロリンクでは、タイヤに複数の力が同時に課せられることがしばしばある。空力ダウンフォースによって、垂直方向の力がタイヤを押し付ける。同時に、コーナー通過時には、横方向の負荷が、加速と減速には、縦方向の力がタイヤに加えられることになります。これらは全てタイヤ構造の負荷を増大させます。2013年の勝利戦略は3ストップだった。ルイス・ハミルトンが、ミディアムとソフトを使用して、メルセデスでの初勝利を飾った。ロータスのキミ・ライコネンは、2ストップ戦略で2位を獲得した。ポール・ヘンベリー (ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター)「ハンガリーは、そのトリッキーなレイアウトでよく知られており、オーバーテイクや、コース全体への完璧なセットアップを見いだすことが難しいところですので、トラックポジションを上げるきちょな機会を提供する戦略が特に重要になります。ハンガリーでは、通用、天候状態も話題になりますが、我々のタイヤはホッケンハイムの非常に高い路面温度の下でも性能を発揮しましたので、ここでも問題無いことを確信しています。ハンガリーへ持ち込むタイヤの組み合わせは、増大する厳しさへ対応するために、ホッケンハイムより1段階硬いものとなっています。したがって、通常通り2ストップを予測していますが、金曜フリー走行後には、より明確な予測ができると思います」ジャン・アレジ (ピレリ・コンサルタント)「近年、ハンガロリンクはポジティブな方向に変わったと思います。全体的に低速コーナーで構成され、低速ギアでの加速が多いため、最大レベルのダウンフォースのセットアップで走行することになりますが、今では最大限にプッシュ可能な箇所もいくつか存在します。良好なトラクションを維持することが主な技術的な課題であり、何よりも大事なことは、リアタイヤをケアすることです。さもなければ、最終的にグリップと制動力を失うことになります。このサーキットでの鍵となるポイントがいくつかあります。例えを挙げると、ピットを出た後の第2コーナーです。ここは、下り勾配の左周りコーナーで、急角度のように見えますが実際はそうではありません。したがって、続く右回りのコーナーのためのベストラインを維持するために、インサイド側を走行し続ける必要があります。実際、ハンガロリンクでは、全てのコーナーが次のコーナーへ影響を及ぼしています。全てのコーナーで、ドライバーには慎重なスロットル調整が求められますが、今年のマシンはトルクが増大しているため、この作業が容易ではありません。したがって、各コーナーで理想的なレーシングラインを維持することが極めて難しくなっているように思います」
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