MotoGPのポイントリーダーであるマルク・マルケスが、スタートでの大きなミスにもかかわらず、イタリアGPのスプリントレースを支配した。ムジェロに迫っていた雨は、猛暑を和らげるかに思われたが結局降ることはなかった。そして、ポールポジションからスタートするマルケスのレースには別の波乱があった。
スタート直前、マルケスがスタートデバイスをいじっているのが見られた。そして実際、スタートは悲惨なもので、サンドナートのブレーキングゾーンに差し掛かる時点で最大でも6番手まで順位を落とした。しかしその前方で、マーベリック・ビニャーレスがファビオ・クアルタラロを抜こうとして混乱が生じ、その隙を突いてマルケスはすぐに4番手へ浮上。さらにクアルタラロもすぐに攻略し、前を行く2台――チームメイトのフランチェスコ・バニャイアとアレックス・マルケスの追撃に入った。翌周のメインストレートでは、3台が実質的に横並びとなり、最終的には弟アレックスが先頭に立ち、バニャイアは混乱の中で3番手に後退。そのまま2台から引き離され始めた。4周目、マルクはサンドナートのブレーキングでアレックスをオーバーテイクし、そこから先は一度もリードを脅かされることはなかった。マルケス兄弟は1.4秒差でチェッカーを受け、今季すべてのスプリントで1-2フィニッシュを記録するという驚異的な連続記録を継続。ランキングでは2人の差は35ポイントとなった。一方、現在ランキングでマルクに63ポイント差をつけられているバニャイアは、一時アレックスへの反撃を狙う場面もあったが、トラックリミット警告を受けて以降はビニャーレスから3位を守ることに集中する展開となった。テック3 KTMのビニャーレスは、序盤にクアルタラロに引っかかってしまったことが表彰台争いに響いたが、5周目のメインストレートでようやくヤマハを抜き、前へ進んだ。しかしクアルタラロの有望だったレースはそこから崩れていく。金曜プラクティスでの肩の負傷とヤマハの直線スピード不足が影響したのかもしれない。その後、彼はVR46のファビオ・ディ・ジャンアントニオとフランコ・モルビデリに抜かれ、さらにアプリリアのマルコ・ベッツェッキとラウル・フェルナンデスにもかわされる(ベッツェッキはモルビデリも攻略)。最終的には、16番手スタートから追い上げてきたフェルミン・アルデグエルに最終ラップで抜かれ、クアルタラロ――ひいてはヤマハにとってはポイントなしのレースとなった。ホンダも同様に無得点で終わり、ポイント争いに絡む兆しはなかったが、負傷中のルカ・マリーニの代役を務めるテストライダー中上貴晶が15位でフィニッシュする健闘を見せた。リタイアは2件のインシデントによって3台が記録。まずターン1では、ブラッド・ビンダーがディ・ジャンアントニオとの接触で転倒(その内側にはベッツェッキもいた)。その際、外側にいたLCRホンダのヨハン・ザルコを巻き込んでしまった。審議の結果、これはレーシングインシデントと判断された。なお、ビンダーとチームメイトのペドロ・アコスタは、このレースで唯一ハードフロントタイヤを選択していたが、アコスタも1周目の最終コーナーでフロントを失いリタイア。ビニャーレスを追う中でのアクシデントだった。2025年 MotoGP イタリアGP スプリント1.マルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)2.アレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)3.フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)4.マーベリック・ビニャーレス(Red Bull KTM Tech3)5.ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)6.マルコ・ベッツェッキ(Aprilia Racing)7.フランコ・モルビデリ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)8.ラウル・フェルナンデス(Trackhouse MotoGP Team)9.フェルミン・アルデグエル(BK8 Gresini Racing MotoGP)10.ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)11.エネア・バスティアニーニ(Red Bull KTM Tech3)12.小椋藍(Trackhouse MotoGP Team)13.ミゲル・オリベイラ(Prima Pramac Yamaha MotoGP)14.ジョアン・ミル(Honda HRC Castrol)15.中上貴晶(Honda HRC Castrol)16.ジャック・ミラー(Prima Pramac Yamaha MotoGP)17.ロレンソ・サバドーリ(Aprilia Racing)18.アレックス・リンス(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)19.ソムキアット・チャントラ(IDEMITSU Honda LCR)リタイア:ペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)ヨハン・ザルコ(CASTROL Honda LCR)ブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)