ミック・シューマッハが、F1復帰を見据えた戦略的一手として、ドイツのベテランスポーツカーレーサー、ディルク・ミュラーを個人アドバイザーに起用した。2年にわたってF1のグリッドから離れているミックは、今回の新たなパートナーシップを通じて、トップカテゴリーへの復帰を現実のものとしたい考えだ。
7度のF1ワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハの息子であるミックは、2021年にハースからF1デビュー。ニキータ・マゼピンとコンビを組み、翌2022年にはケビン・マグヌッセンと共に参戦したが、シーズン終了後にシートを失った。その後はメルセデスF1のリザーブドライバーとして2023年と2024年に在籍しながら、アルピーヌから世界耐久選手権(WEC)に参戦。F1の表舞台からは遠ざかっていたものの、元F2チャンピオンとしての実績と復帰への意欲を胸に、再び最高峰の舞台を目指している。ドイツの「Motorsport-Magazin」のインタビューで、ミュラーは自身の役割とミックへの思いをこう語っている。「私はアドバイザーとしてミックのそばにいる。彼にはすでにチームがあり、私はその一員として加わった。実は昨年からやり取りを重ねてきたが、今こそが動き出す最適なタイミングだと感じている」「ミックは並外れた才能を持っているだけでなく、人間的にも素晴らしい。私にできることがあれば全力で支えたい」ミックの成長を信じるミュラーミュラーとシューマッハ家の関係は、2000年代初頭にまでさかのぼるという。「最初に本格的に親交を深めたのは、ミハエルが自宅で開いたサッカーの試合で、チームメイトを探していた時だった」とミュラーは振り返る。「そこから自然と関係が築かれていった。あの頃、ミハエルには本当にいろいろと助けてもらった」「ミックのカート時代からF1までの輝かしいキャリアは常に見守ってきた。以前から連絡は取り合っていたが、それはあくまで水面下のものだった」「彼は、F1という“サメの水槽”の中でも自分を貫ける精神力を持っている。今のミックは、2021年にF1に参戦した当時とは比べ物にならないほど成長している。彼は過去を振り返るのではなく、前だけを見ている」「F2チャンピオンとしてF1に上がった当時よりも、今の彼は知識も経験も圧倒的に増しており、まったく異なる立場にある」ミュラーは最後に「私はミックを支えることに、非常に強い意義を感じている」と語った。ミュラーの助言とミック・シューマッハの新たな視点を武器に、目指すはF1グリッドへの復帰。とりわけ、新チーム「キャデラックF1チーム」での可能性も取り沙汰されている。このパートナーシップが実を結ぶかどうかはまだ分からない。ただ、両者が共通して信じているのは、ミック・シューマッハのF1物語がまだ終わっていないということだ。
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