トト・ヴォルフのメルセデスF1代表としての経歴は、2013年にチームに加わって以来、輝かしいものだった。オーストリア人の彼は、2014年に始まったV6ターボハイブリッド時代における先導役だった。2017年と2018年にフェラーリと激しい戦いを繰り広げ、いずれもメルセデスが勝利した困難な挑戦を含め、チームを率いた。さらに、2021年にはルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンによる伝説的なタイトル争いの中でチーム代表を務め、ドライバーズタイトルは逃したがコンストラクターズタイトルは獲得した。
15ものF1タイトルを手にしたことで、トト・ヴォルフはすでにスポーツ史上もっとも傑出したチーム代表のひとりとして殿堂入りしている。こうした中で、2026年シーズンとメルセデスの成績は、トト・ヴォルフのチーム代表としてのレガシーに大きな影響を与える可能性がある。チームがトップに返り咲き、タイトルを争うならば、彼の名声はさらに確固たるものになる。一方で、そうならずメルセデスが優勝争いに絡めなければ、2026年シーズンはトト・ヴォルフの評価を決定づける分岐点となり得る。トト・ヴォルフのメルセデスでの始まり多くの人々は、ヴォルフがメルセデスを率いて支配的な時代を築いたことを覚えているが、実際にはロス・ブラウンからチームを引き継いだ形だった。ヴォルフは2013年にディレクターとしてチームに参加。2014年にはパディ・ロウと共にチーム代表のひとりとなり、その後まもなく単独の指導者となった。2014年に支配を始めたチームは、2017〜18年以降とは大きく姿を変えており、その変化にはヴォルフの色が濃く刻まれていた。最初の数年の勝利を経て、F1を支配したメルセデスは完全にヴォルフのDNAを持つチームになっていた。しかしその一方で、ヴォルフが最終的にメルセデス内で権力を掌握する過程や、ロス・ブラウンがどのように追い出されたかについては疑問の声もある。実際にはヴォルフとニキ・ラウダがブラウンを孤立させ、ブラウンは生き残りのために戦うよりも離脱を選んだのだった。唯一の汚点彼の経歴における最大の汚点は、近年特に注目を集める点だ。それは、トト・ヴォルフがロス・ブラウンの敷いた基盤に依存していたのではないか、という指摘である。ヴォルフは2013年にエグゼクティブディレクターとしてチームに加わり、2014年にはブラウンが去っていた。その時点でブラウンが築いた組織は極めて強力で、V6ハイブリッドPUは群を抜いて優れており、チーム体制も優秀な人材で固められていた。つまり土台は整っていたのだ。確かにその後8年間支配を維持した努力は評価に値するが、2014年のスタート時点においてはメルセデスが他を圧倒する基盤を持っていたのも事実である。したがって、ヴォルフが15の世界タイトルを持つことは正当だが、「メルセデス帝国を築いた」のではなく「受け継いだ」のだという意見が根強く存在する。メルセデスは4年間の再建を経た重要なのは、もしトト・ヴォルフがチームを再びトップに導けば、誰も彼の功績を疑えないということだ。現在のメルセデスは完全に彼のDNAを宿し、外部の影響は存在しない。確かにチームは過去4年間低迷しているが、F1は波のあるスポーツであり、勝てる時もあれば勝てない時もある。今回の場合、丸々ひとつのレギュレーション期を棒に振り、再編成と再構築に時間を費やした。2026年のマシンは完全にヴォルフが作り上げたチームによるものである。もしこのチームが再びトップに返り咲けば、トト・ヴォルフは再度王者の座に返り咲く可能性がある。だがもし失敗すれば、2つのレギュレーション期連続で失敗することになり、ヴォルフの将来のリーダーシップだけでなく、これまでの功績そのものに疑問符が付く。トト・ヴォルフは現役で最も成功したチーム代表のひとりであることは間違いないが、2026年に再び誤れば、彼の未来と過去が同時に精査されることになる。
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