F1オーストラリアGPの決勝でセバスチャン・ベッテルがピットストップ後にトップでコースに復帰した光景には誰もが驚いた。レース序盤は、メルセデスのルイス・ハミルトンがリード。2位を走るキミ・ライコネンのアンダーカットを防ぐために19周目にピットインしたハミルトンは、25周目にバーチャルセーフティカーが導入される段階でトップを走るセバスチャン・ベッテルとの差を11.3秒まで縮めていた。
F1オーストラリアGPのピットストップでロスするタイムは約23秒。実際にピットストップでルイス・ハミルトンはそれを21.821秒に抑えている。しかし、バーチャルセーフティカーが入ると周回速度が制限される。26周目には各ドライバーは2分5秒以下までタイムを下げた。上位勢はそれまで1分28秒台で走行しており、およそ36秒ペースを落としたことになる。すなわち、バーチャルセーフティカーが入ったタイミングでピットインすると約23秒のタイムロスが、約13秒に減少されることになる。だが、セバスチャン・ベッテルとルイス・ハミルトンとの差はその時点で11.3秒。まだルイス・ハミルトンに分があった。セバスチャン・ベッテルのピットストップでのタイムロスは21.787秒。ハミルトンより、0.034秒速かったに過ぎない。しかし、バーチャルセーフティカー時の13秒というタイムロスにはある盲点があった。第1セーフティーカーラインからピットレーン入口の間には速度制限が適用されない区間がある。アルバート・パークではその区間は数10メートルとなる。セバスチャン・ベッテルはそのレギュレーションを十分に理解しており、メルセデスはソフトウエアはその区間でのゲインを考慮できていなかったと考えられる。メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフもその可能性を認めている。「我々のコンピュターは、ベッテルが我々の前に出るために必要なタイムは15秒だと算出していた」とトト・ヴォルフは語る。「我々は常にその3~4秒以内にマージンをとっていた。そして、突然、カメラはセバスチャンが我々の前に出てくるのを捕えた。まだ説明はできない」「セバスチャンがピットにむけて2つのセーフティカーラインの間で加速したのは非常に不運な状況だったかもしれない。わからないし、現時点では仮設に過ぎない」「彼は高速ゾーンでかなりハードにブレーキをかけなかったルイスよりもバーチャルセーフティカーで失うものが少なくなっていたのだろう」「我々が5年間使用していたソフトウエアやシステムが間違って数字をはじきだしていただけだ」「我々に唯一できたことは、ピットストップ後にプッシュして、より大きなギャップを作ることしかなかった。だが、タイヤはあと40周くらい走らなければならなかった、あまりそれを伸ばしすぎないことが重要だった。いずれにせよ、彼はルイスよりも速かった」「1ストップ戦略にコミットし、セーフティカーやバーチャルセーフティカーが入ることを想定すれば、アンダーカットのリスクを避けるためにキミのピットストップに反応しなければならないのは明らかだった。ギャップは縮めていた。我々はバーチャルセーフティカーが入っても前に留まるには十分なギャップだとわかっていた」「もし、あと3~4秒が必要だとわかっていれば、レース終了間際のリスクをとってでも、タイヤでもう少しプッシュしていただろう」「モーターレーシングでの常にバーチャルセーフティカーや通常のセーフティカーで運に恵まれることもあれば、噛みつかれることもある。我々は噛みつかれた」
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