マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンは、F1アメリカGPスプリントレースの1コーナーで起きた接触を「アマチュアのようなドライビング」と批判した直後、その発言を撤回し、ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグに対して個人的に謝罪したことが明らかになった。スプリントのスタートでは、4番グリッドのヒュルケンベルグが1コーナーの混戦でオスカー・ピアストリと接触。
ピアストリはチームメイトのランド・ノリス、そしてポールスタートのマックス・フェルスタッペンをスイッチバックで抜こうとした際に、コーナー内側にいたフェルナンド・アロンソとヒュルケンベルグの間で挟まれる形となった。結果、ピアストリ、ノリス、アロンソの3台がリタイアし、ヒュルケンベルグのみが走行を続けた。ブラウンはピットウォールからSky Sports F1に出演しており、接触直後にはこう語っていた。「我々のドライバーたちは悪くない。あれは完全に“アマチュアアワー”のようなドライビングだった。リプレイを見直す必要はあるが、明らかにニコがオスカーに突っ込んだ。あんな位置にいるべきじゃなかったし、左リアにぶつけてしまった」しかしその後、映像を確認したブラウンはすぐに発言を訂正した。「リプレイを見て考えが変わった。あれをニコのせいにはできない。熱くなっていたんだ。ターン1では多くのインシデントが起きていたが、ニコを責めるのは違うと思う」ウィートリー代表「ザクはすぐに謝罪した」ザウバーF1チーム(Stake F1チーム)の代表ジョナサン・ウィートリーによると、ブラウンは事件直後にすぐ謝罪の連絡を入れ、ヒュルケンベルグ本人にも直接謝罪したという。「ザクはすぐに私にメッセージを送ってきて、ニコにも個人的に謝罪した」とウィートリーはRacingNews365などのメディアに語った。「このスポーツは情熱的で、それがいいところでもある。2台がタイトルを争っていて、その2台が1コーナーでリタイアしたら、感情的になるのも無理はない。時には誰かのせいだと思いたくなる瞬間もある。でも、それは“熱くなった瞬間の感情”だ」「ザクのことは長く知っているし、彼もレーサーだ。私たちもそうだ。最終的にはすぐに誤解が解けて、すべてうまく収まった」ヒュルケンベルグは本戦で8位入賞ヒュルケンベルグはスプリントでの騒動を引きずることなく、決勝では見事な走りを披露。イギリスGP以来8戦ぶりとなるポイント獲得(8位)を果たした。ウィートリー代表は「強い週末を締めくくる結果」としてドライバーを称賛している。マクラーレンは内部で再検証へマクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、今回の接触についてチームとして内部検証を行う方針を明らかにした。「ランドとオスカーとは何度か話をしたが、主な目的は“リセット”することだった。レースでは後ろを振り返りすぎてはいけない。すぐに次の予選が控えているからね」とステラは語る。「我々は適切なタイミングでこのインシデントを再検証する。チーム全体とドライバーで協力し、正しい判断を下すつもりだ。ランドもオスカーもこのアプローチに納得している」ブラウンの“即修正”が示した信頼構築の力今回の件は、感情的な発言をすぐに撤回し、直接謝罪に踏み切ったブラウンの迅速な対応が印象的だった。タイトル争いのプレッシャーの中で感情が高ぶるのは避けがたいが、誤りを認めて相手の立場を尊重した姿勢は、チーム間の信頼を保つうえで大きな意味を持つ。また、ウィートリーが語ったように「レーサー同士の理解」が成立していた点も象徴的だ。激しい競争の裏で人間関係を円滑に保つことができるのは、F1という過酷な世界においても成熟したリーダーの証といえるだろう。