ロータスF1チームの2014年F1マシン『ロータス E22』は“2本牙ノーズ”を採用。だが、決して競争力を発揮することなく、その奇想天外なノーズ形状だけがF1史に残されることになった。2014年のF1レギュレーションでは、安全面の理由から断面積が小さく、高さも約300mm低い位置に取り付けられる“ひとつのノーズ先端”が義務付けられた。
ロータス E22は、“ひとつのノーズ先端”という規約に従うため、長さが異なる二本の牙が供えられた。つまり、長い方のノーズが義務づけられた先端であり、もう一方の牙はノーズ先端とは見なされないよう短くした。両方の牙は衝突吸収構造、フロントウィングのステー、さらにターニング・ベーンとして機能する。通常であれば、規約の抜け穴をついたソリューションには他チームが抗議するものだが、2014年は多くのコンセプトが見られ、FIAが合法と判断したことについて大きな批判は起きなかった。フェラーリのテクニカルディレクターを務めていたジェームズ・アリソンは「クルマの先端分のデザインはそれほど重要ではない」と語った。しかし、その奇妙なルックスから想像できるようにロータス E22は競争力を見せなかった。そもそも、財政難によってプレシーズンテスト1回目に参加できないなど開発が遅れていたことに加え、ルノーのF1パワーユニットは競争力と信頼性に欠けていた。さらに合法的なアクティブサスペンションであるFRIC(フロント・アンド・リア・インタラクティブ・コントロール)を禁じられたことも痛かった。結局、ロマン・グロージャンとパストール・マルドナドのコンビは3回の入賞で10ポイントしか獲得できず、コンストラクターズ選手権を8位で終えた。F1は2015年から寸法などを細かく規定した新たなノーズ規約を導入し、2本牙ノーズは1年で姿を消した。ロータスF1チームは、2010年でワークス参戦をやめたルノーF1チームがグループ・ロータスに株式を売却して誕生。2011年にロータス・ルノーGPの名前で参戦した後、チーム・ロータスとの名称使用をめぐる訴訟に勝ち、2012年からロータスF1チームとして参戦。だが、2015年末に再びルノーに再買収され、ロータスの名前は再びF1から消えることになった。その6年間のなかでロータスF1チームはキミ・ライコネンが2勝を挙げた。
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