トロロッソ・ホンダのドライバーは、ホンダのF1エンジンのドライバビリティに好感触を示しており、ホンダもこれまでのデータ蓄積や試行錯誤などの積み重ねが実を結んだものであると自信をみせる。夏休み前、前半戦最後の戦いとなるハンガリーGPで、トロロッソ・ホンダは、ここ数戦の低迷を乗り越え、大きな躍進とも言える成果を出した。今シーズン初めて2台揃ってトップ10入りした予選を経て、レースではピエール・ガスリーがハイペースで上位を走行し、危なげなく6位でフィニッシュを果たした。
HRD ミルトンキーンズのパワーユニットエンジニアである湊谷圭祐「ウエットコンディションで、しかもあのような刻々と状況が変わる中で、チームの戦略に応じてエネルギーマネージメントの調整をリニアに行いました。具体的には、雨、路面の状況に応じて連続アタックを可能にするエネルギーマネージメントです」は語る。「通常、予選では1周でバッテリーを使いきるようなアシストが目標ですが、ウエットではアクセル開度が高くないので、使いきることはできません。今回のように1周の間にコンディションが変わるときには、タイムを出す上で2周連続のアタックを求められる場合があります。それを可能にするためのエネルギーマネージメントを行いました。チームやドライバーとの密なコミュニケーションの下に行われ、結果としてそれがうまくいきました」ピエール・ガスリーは、2018年のホンダのF1エンジンのドライバビリティは、昨シーズン末にルノーのF1エンジンで経験したよりも“一貫性がある”と考えており、エンジンのドライバビリティをストロングポイントだと感じていると語る。「シーズン序盤戦からドライバビリティ面に関してはかなりいいと思うし、昨年のルノーと比較して一貫性があると思う」とピエール・ガスリーはコメント。「スロットルとエンジンから得られるトルクはホンダの方が多い。僕たちはどこを改善する必要があるかをわかってるし、全体のパワーという点では改善しなければならないけど、ドライバビリティという点では本当に優れている」湊谷圭祐は、ピエール・ガスリーが言うドライバビリティを以下のように説明する。「ドライバビリティとは、簡単に言えば、アクセル操作に応じたパワーユニットのパワーの出方をコントロールすることで、アクセルを踏んだ量に合わせて、パワーユニットから適正なパワーがマシンに伝わることが理想です」と湊谷圭祐は語る。「ドライバーにとってのパワーユニットの扱いやすさと言ってもいいかもしれません。これはドライバーの好みやドライビングスタイルによっても変わってきますが、アクセルを踏んだ際に急にトルクが立ち上がるようなピーキーな特性であったり、立ち上がりのトルクが不足するようでは、ドライビングに悪影響が出てしまいます」「このドライバビリティは、これまでの積み重ねやSakuraでの開発によって、今年大きく改善した部分だと思います」「エネルギーマネージメントは、コースによって全く違うので毎戦調整を行いますが、ドライバビリティはこれまでの積み重ねに加え、今年の仕様になる際に改善を行っていますので、レースごとに頻繁に設定を変えるほどではないですし、それについてドライバーから不満は出ていません」ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治もドライバビリティはホンダの優先事項のひとつだと語る。「パワーユニットとして、新たなアイテムを入れるアップデートも開発していますが、使い方としてまだまだ工夫できることは多いと感じています」と田辺豊治はコメント。「ホンダのトラックサイドサポートはドライバビリティが優先事項のひとつだと考えています。彼らはHRD Sakura側でそれを開発しており、我々はドライバーがカスタマーである現実世界のここにそれをもたらしています」「ドライバビリティはパワーユニットとトライバーとのコミュニケーションですし、我々はそのエリアを改善させる必要があります。我々にとってそこは非常に重要です」田辺豊治は、まだF1パワーユニットのパフォーマンスと信頼性との間の“限界”を確立させているところだと語り、カナダでアップグレード版“スペック2”エンジンを投入した後に問題を評価して、エンジン自体に根本的な問題はないという結果が出たことで、夏休み後のスパもしくはモンツァで次のエンジンアップグレードが投入される見込みであることを明らかにした。「次のステップアップの正確なタイミングを教えることはできませんが、我々は継続的にパフォーマンスと信頼性を向上させています」と田辺豊治はコメント。「我々には開発スケジュールを完了させるためのアイテム、優先順位、時間があります。我々はそれらを開発し続けていきます。投入に問題なければ、常にいつでもそれらを投入していきます」
全文を読む