中嶋悟が、F1公式ゲーム『F1 2013』の合同インタービューに参加。クラシックモードに登場する自身のロータス 100Tや当時と今のF1、そして2015年にF1復帰するホンダについてコメントした。『F1 2013』のグラフィックをご覧になっての率直なご感想をお教えください。プレイ映像を見せてもらいましたが、リアルにできているなと思いました。僕のヘルメットも細かいところまでよく再現できていると感じました。サーキットはスペインのヘレスだったんですけど、画面を見てすぐにヘレスだと分かるくらいでした。
当時のマシンは忠実に再現されていると感じましたか。そうですね。当時の車載カメラにはなかった、マシン前方やコクピットにも、ゲームでは視点が変更できて、コクピットも結構リアリティがありましたね。『F1 2013』で1980年代のF1マシンでプレイしてみたところ、現在のマシンよりもコクピットの視野がやや狭いような印象を受けたのですが、実際はいかがでしたか。今のマシンに乗っていないから分からないのが率直なところですが、簡単に言えば、F1もどんどん安全規定や作り方が変わってきていて、見かけは同じでも素材が変わっているところもあったりしますので、意外に広いんじゃないかな。当時は、手袋の拳が破れるくらい狭いところに収まっていましたからね。やはり操作感や乗り心地も今よりも当時の方が難しかったりしたのでしょうか。レーシングカーは日々進化しています。速くするために、そして労力を減らすために、オートマチックになったり、マテリアルや部品ひとつひとつも進歩していますから、たぶん操作性は格段に良くなっているでしょうね。当時は手動式のギアでしたけど、今はゲームでも(ギアを変更するのに)手を離す必要はないんでしょうね。ゲームの中で視点を切り替えると、300km/hの世界でギアをチェンジするために、一瞬手を離して片手運転になる場面を見ることができるのですが、当時のドライバーの方々は相当なスリル、緊張、集中力の中で運転していたのではないかと思うのですが、実際はいかがだったのでしょうか。今のマシンはセミオートマチックになっていたり、パワーステアリングが付いていたりしますが、私たちの頃はそういうものがありませんでした。例えば、鈴鹿サーキットのダンロップ・コーナーは200kmから230km/hくらいで曲がりながら進入しますが、そういう横からのG(重力加速度)がかかった中でハンドルを握りつつ、ギアアップするために片手になるのはすごく重かったし、つらかったし、難しかったと記憶しています。現役当時のF1で最も魅力的だったもの、今のF1で最も魅力的だと思うものは何ですか?当時の自分にとって、ドライバーとしてのF1の魅力は、やっぱり世界で一番速いレーシングカーに乗れること。なおかつそのマシンで競争できるわけですから、それに尽きますね。25年前に今のマシンを僕に与えてくれたら、全部勝ってると思います(笑)。過去も現在も、その時点でのレギュレーションに合ったマシンで最大限の能力を引きだそうとする点は同じですから、(ちょっと質問の内容とは違うかもしれませんが)その魅力は変わらないだろうと思います。今のマシンも運転したことがないので、乗ってみたいなと思いますね。もしも今のF1ドライバーと対戦するとしたら、誰と戦いたいですか? また、80年代当時に戻ったとして、対戦してみたいドライバーはいますか? 今なら、(セバスチャン・)ベッテルを80年代のマシンに乗せて、今のマシンに僕が乗って戦ったらどうかなぁと思います。ただし、2〜3周の話ですけどね。当時だったら、(アイルトン・)セナとか。改めて準備をして臨んでもいいと思いますね。僕が当時の年齢に戻って今の彼が生きていれば、50代になりますよね。ちょうどいいんじゃないかな。今シーズンのマシンで乗ってみたいチームのマシンはありますか?チームでは、一番速いマシンに乗ってみたいので、レッドブルですね。乗りやすいのかどうかは分かりませんが、やはり速いマシンに乗りたいです。「雨の中嶋」と言われるほど、悪路に強いという印象の中嶋さんですが、雨の際に注意すべき点やアドバイスはありますか?一般道でのアドバイスとしては、まずぶつからないことですね(笑)。F1ドライバーの場合は、天気に応じたリミットのスピードで滑らないように走りますが、一般道などでの制限速度だと、スリップするかどうかの限界点はもう少し上にありますから、市販車だと感じにくいんです。でも雨の日の運転で、とっさにブレーキをかけるような時には、明らかに晴れの時よりも制動距離が長くなるし、ハンドルも曲がりにくくなる。しかもウィンドウやミラーに雨が付いて視界が悪くなるので……そういうことを認識しておく必要があると思います。安全運転のことなら任せてください(笑)!ゲームの天候システムも前作より緻密に再現できるようになりましたので、大雨や降り始めなども描写していますし、雨が上がって地面が乾いていく過程も描写されていますので、ぜひ参考にして走ってもらいたいですね。そうですね。レースでは、雨が止むと最初は乾きだしたところを走るんですけど、ウェットタイヤではオーバーヒートしたりしますので、半分ずらしたり(濡れたところを通るようにしたり)と、そんなことを実際のドライバーは考えながら走っていますよ。日本グランプリの舞台、鈴鹿サーキットを速く走るためのコツは何ですか?どこのサーキットも同じですが、マシンの限界点近辺をいかに持続して走るかということですね。ヘアピンを100km/h、第一コーナーを220〜230km/hで進入すると、(限界を超えてグリップしなくなり)地面からタイヤが離れる瞬間が来ます。明らかにその(限界のスピードの)手前であれば、今の僕でも乗れると思いますが、それじゃ競争じゃない、勝負にならないわけです。F1ドライバーというのは、100km/hと101km/hや99km/hの差が勝敗を分ける世界で競っているので、コーナリングやブレーキングの際には、常にそういうことを意識しています。鈴鹿であれば、第一コーナーからS字、ダンロップ・コーナーのあたりで、大体コーナリング・スピードが160km〜180km/hほどだと思いますが、161km/hでいけるか、160.5km/hでいけるか、そういう細かい範囲での綱渡りを、毎ラップでしていますね。ブレーキングも同様に、減速する際の距離や時間を短くしようと努力しています。ちょっとこれは難しいですね。一般道ではなかなか体験できない範囲ですが、スピンしやすい雪道のような感覚で、いつも走っているのがレーシングドライバーだと思ってもらえればいいですかね。2015年にF1へ復帰するホンダに...