F1では近年、戦略が硬直化し、1ストップのレースが急増している。タイヤのデグラデーションが小さく、各チームが同じ最適解に収束してしまうことが、レースの動きを奪っているためだ。こうした状況の中、F1コミッションは2026年の「2ストップ義務化」を議題に取り上げたものの、明確な結論には至らず、議論は来年に持ち越された。その一方で、メルセデスのジョージ・ラッセルが示した“ある提案”が注目を集めている。
ラッセルが語る“完璧なタイヤ”とはラッセルは、F1のレースを面白くするためにはタイヤ特性そのものを変える必要があると主張する。ドライバーとして「最速で楽しいクルマ」を望む一方、世界中のファンにとって魅力的なレースを作らなければならないと前置きしたうえで、理想のタイヤ像を語った。ラッセルが描く“魔法のタイヤ”とは、60周レースを例にしたとき、各コンパウンドの寿命が明確に設定されているものだ。■ ハード:30周で急激に性能が落ちる■ ミディアム:20周で性能低下■ ソフト:10周で性能低下性能が“崖”のように落ちることで、チームは戦略選択を迫られ、レースに幅が生まれる。ラッセルは「これが実現すれば完璧なシナリオになる」と述べている。ただし、ピレリにとって路面温度も舗装も異なる全サーキットに対応したタイヤを作るのは容易ではないと理解も示し、この案が“魔法のような理想論”であることも認めている。2ストップ義務化だけではレースは変わらないF1コミッションで議論された「2ストップ義務化」についても、ラッセルは慎重な立場を示す。もしタイヤが今と同じように摩耗しなければ、2ストップを義務化してもオーバーテイクは増えないというのが彼の見解だ。「タイヤが減らないままでは、2ストップでも3ストップでもレースは動かない。マシンの速さの差とタイヤ性能の差が組み合わさって初めてオーバーテイクが生まれる」つまり、レース戦略の多様化を実現するには、“タイヤがしっかり性能を失う設計であること” が前提条件となる。2026年レギュレーションでもタイヤは焦点に2026年からはパワーユニットが大幅刷新され、アクティブエアロの導入によってマシン挙動も大きく変化する。そのため、現在のタイヤ問題がどの程度維持されるのか、あるいは新たな課題が生まれるのかは未知数だ。F1コミッションでの議論も当面は続くため、2ストップ義務化が実際に導入されるとしても早くて2027年以降となる。今回のラッセルの提案が示すのは、単なるルール変更ではなく、“レースを動かす仕組みそのものを再設計する必要性” だ。2026年の大変革期を前に、F1は再び「面白いレースとは何か」という根本的な問いに向き合っている。
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