FIA(国際自動車連盟)は、元F1ドライバーでGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)会長のアレクサンダー・ヴルツによるカート競技への批判に対し、強く反論した。ヴルツは最近のインタビューで、ジュニア・カートに導入された空力的改造が「危険」で「完全に狂っている」と主張していた。ヴルツはオランダのメディア『GPBlog』に対し、F1ドライバー全20人が一致して懸念を示したと語り、FIAがカートに空力パーツを「許可した」と非難した。
「フロアやウイング、ダウンフォース設定を持ち込んでいる」とヴルツは述べた。「我々全員が『これは完全に狂っている』と言った。カートはとても素晴らしいものなのに、すべてがより高価で、もしかしたらより危険になるかもしれない。スポーツに利益はなく、欠点しかない。みんなそのダウンフォースパーツを買いたがるだろうが、スポーツやドライバーにとって良いことではない」これに対しFIAは、規則が厳格に管理されており、そのような改造は不可能だと断言した。FIAの公式声明「FIAは、GPBlog.comに掲載された最近の記事に含まれるいくつかの主張を強く否定する」と声明は述べた。「これらの発言は誤りであり、CIK-FIAカート技術およびホモロゲーション規則を誤解している。これらの規則はFIA公認カート競技を統括しており、カートの空力、ウイング、フロアへの改造を明確に禁止している」声明ではさらに、今年2月に世界モータースポーツ評議会で改定された技術規則第4.6条を引用し、カートのフロアトレイ改造を明確に禁止していると強調。さらに「FIAが承認したコンポーネントのみ使用可能」と定めており、非承認パーツの持ち込みを防いでいると説明した。「ホモロゲーション済みのすべてのボディワークはFIA基準のクラッシュテストを受け、安全性と強度が保証されている。現在、5社がボディワーク部品をホモロゲーションしており、番号システムにより規則順守が追跡可能だ」「また、ホモロゲーション規則第22条はボディワークをブロー成形と定めており、可変式の空力機能を本質的に排除している。技術規則第3.2条も、ボディワークの改造を禁止している」安全性と規制順守を強調FIAは、規則が厳格に施行されていると強調し、安全性が最優先事項であると繰り返した。「FIAは、カートにおける一貫性、安全性、コスト抑制、公平性を確保する厳格な規制枠組みを改めて強調する」「記事で示唆されたような改造は、FIA公認のカート競技では認められていない。すべての部品はホモロゲーションと車検により厳しく管理され、未承認の改造を防いでいる」さらに「安全性がアップグレードのために損なわれた」というヴルツの主張を完全に否定した。「安全性は常にFIAの最優先事項である。安全が損なわれたという指摘は全く根拠がなく事実無根だ。今年、技術規則はさらに強化され、カートボディプロテクションやライトパネル、ヘルメット基準など新たな安全基準を導入している。近く新しい安全装置のイニシアチブも発表される」またFIAは、カートをより「アクセスしやすく包括的」にする取り組みも進めており、その一環として標準化されたマシンを用いる「FIAカート アライブ・アンド・ドライブ ワールドカップ」を11月に開催する予定だと明らかにした。広がる対立の波紋現時点で、FIAはヴルツの発言に対し撤回を求める可能性も検討しているとされる。しかし「20人のF1ドライバーが一斉に支持した」という主張がどのようにして合意に至ったのか、また本当に全員が同意していたのなら、なぜ直接FIAに懸念を伝えなかったのかという疑問も浮上している。さらに、インタビューは先月のベルギーGPで行われたものの、記事が公開されるまで数週間を要しており、その間にGPBlogがFIAに反応を求めなかった点も不可解だ。政治的な思惑が影響したのかどうかは不明だが、少なくともFIAが「若手ドライバーの安全を犠牲にした」という見方を強く否定しているのは明らかである。この対立は、カートにとどまらず、F1におけるGPDAとFIAの関係にも影響を及ぼす可能性がある。両者の建設的な対話は、歴史的に安全や規制を巡って重要な役割を果たしてきたからだ。
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