FIAは、バーチャルセーフティカーのテストに好感触を持っているが、実際に導入するにはまだ準備はできていないと述べた。F1日本GPでのジュール・ビアンキの事故を受けて、安全性を向上させるために、バーチャルセーフティカーというプランが提案され、F1アメリカGPとF1ブラジルGPのフリー走行でテストが実施された。
バーチャルセーフティカーは、実際にセーフティカーがコースインすることなく、イエローフラッグ区間でドライバーを強制的に減速させるシステム。レース管制室がマシンに搭載されるGPSから15mの移動ごとに算出される速度データを監視。設定したデルタタイムを外れるとペナルティの対象となるため、ドライバーは常に速度を確認しながら走行しなければならない。バーチャルセーフティカーを2015年から導入する見込みについて質問されたFIAの広報担当は「まだわかりません。テストでは非常に期待が持てる結果が見られましたが、もっと前進させる必要があります」と答えた。テストで表面化した最大の問題は、ドライバーが決められたタイムよりも遅いタイムで走り続けることに集中するのが容易ではないということ。バーチャルセーフティカー下では、通常のラップタイムより35%遅く走ることが要求される。現在、改善案として、音声による警告システムを導入し、ドライバーがステアリングのディスプレイを見続けなくてもいいようにするという案が検討されている。ブラジルで実施されたテストではすでにいくつか改善がなされており、レーシングスピードからバーチャルセーフティカー・スピードに落とすまでの時間が10秒に拡大され、バーチャルセーフティカー期間が終わる際にも10秒のカウンドダウンが行われた。一方、FIAは、バーチャルセーフティカーが導入されても実際のセーフティカーをなくすことはないと断言している。「バーチャルセーフティカーが完全にセーフティカーの代わりになるかというと、その可能性は非常に低いと思います」とFIAの広報担当は述べた。「異なるスピード、異なるやり方で隊列を先導しなければならない場合もあり、それは実際のセーフティカーにしかできないことです」