フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、F1シンガポールGP終盤に起きたルイス・ハミルトンのブレーキトラブルを巡り、安全性を欠いたとの批判を否定した。ハミルトンは左前輪の異常によりスパークを散らしながらコースオフし、最後までマシンを労りつつ走行を続けた。この状況にアストンマーティンのフェルナンド・アロンソが激しく反応し、「ブレーキがない状態で走るなんて安全なのか?」と無線で不満を爆発させたが、バスールは「安全性には問題なかった」と説明している。
ブレーキトラブルと“リフト&コースト”戦略ハミルトンは終盤、アンドレア・キミ・アントネッリとの5位争いの最中に左前輪のブレーキトラブルに見舞われた。ターン16進入でスパークを上げながらコースを外れ、ペースを落とさざるを得なくなった。その後チームメイトのシャルル・ルクレールにポジションを譲り、ブレーキを労わりながらゴールを目指した。最終的にはアロンソが0.4秒差まで迫るも、トラックリミット超過のペナルティでハミルトンが8位、アロンソが7位という結果となった。レース後、バスールは「ブレーキのオーバーヒートは2周目か3周目から始まっていた」と説明。2025年型フェラーリSF-25の弱点である“リフト&コースト”による熱管理を強いられていたという。「ほぼ全レースをリフト&コーストで走らなければならなかった。数周だけプッシュした時のペースは悪くなかったが、レースの95%を守りの走りで終えることになった」安全性への疑念を否定「安全側で走っていた」ハミルトンがブレーキに問題を抱えたまま完走したことについて、一部からは安全性への懸念も指摘された。しかしバスールは「我々はペースを調整していた」と強調し、危険な状態ではなかったと主張した。「安全面では問題なかった。ルイスは最後の数周で30秒もペースを落としていた。決して無理をしていたわけではなく、安全側だった」さらにバスールは笑いを交えてこう付け加えた。「もちろんターゲットは“安全に走ること”ではあるが、“30秒遅く走ること”ではないね」フェラーリに続く熱管理課題シンガポールの高温多湿な環境は、2025年のスクーデリア・フェラーリにとって依然として鬼門である。序盤からブレーキ温度を抑えるための“リフト&コースト”を強いられ、ストレートエンドの制動距離が安定せず、結果的にドライバーの信頼感を損ねた。今回のハミルトンの症状は偶発的なトラブルではなく、熱管理システム全体の限界を示すものとみられる。バスールの「安全だった」という発言の裏には、パフォーマンスを犠牲にしてでも完走を優先する苦しい現実が垣間見える。Source: Motorsport Week