F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、2025年に刷新が予定されているF1パワーユニットでは今後こそMGU-Hを廃止すべく準備を進めている。F1は、2014年にレギュレーションを変更。従来の”エンジン”にあたる内燃機関(ICE)にエネルギー回生システム(ERS)を併用したハイブリッドシステム「パワーユニット(PU)」が導入された。
当初、F1は2021年に導入予定だった新レギュレーションでMGU-Hの廃止を含めた“安価・シンプル・大音量”のエンジンを導入して、新たなエンジンメーカーの参入を促そうとした。しかし、エンジンサプライヤーの反対を受け、ほぼ2014年から変更のないF1パワーユニットを継続することが決まった。スペインのF1記者であるアルバート・ファブレガスは、MGU-Hは、画期的なテクノロジーであるものの、F1にとって明らかに弱点であると説明。この技術は高価で複雑なものであり、グリッド上のギュアップを悪化さえ、新たなエンジンメーカーがF1に参入する妨げになっていると語った。FIA会長のジャン・トッドは、できれば2025年以前にもMGU-Hを廃止したいとの考えを持っているようだ。だが、新型コロナウイルスのパンデミックによりF1はレースが開催できない状況となっているおり、現時点ではF1エンジンに関する技術ルールは凍結されることになっている。RaceFans によると、パワーユニットメーカーがF1パワーユニットをアップグレードできる頻度を徐々に制限し、2023年に設計を完全に凍結させる新しい規則が検討されている。以前は、各F1パワーユニットの設計はシーズンごとに承認を受ける必要があった。しかし、今後、一部のコンポーネントは1年以上使用されるため、この要件は廃止されることになる。F1パワーユニットメーカーは、2021年、2022年、および2023年に、エンジン、ターボ、およびMGU-Hの新しい仕様を年に1回導入することが許可される。それ以降のシーズンはその仕様が凍結される。MGU-K、エネルギーストアおよびコントロールエレクトロニクは、より厳しい制限の対象となる。チームは、2021年末までにそれぞれに新しい設計を導入し、2022年と2023年の2年間のために新しい仕様を導入した後、凍結される。MGU-HとはiMGU-Hは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換する。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出される。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システム。このユニットは、MGU-Hと呼ばれている。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味している。ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまう(ターボラグ)。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行っている。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合がある。その際、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送る。MGU-Hでの発電量は制限されておらず、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができる。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができる。コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合がある。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができる。
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