ジェンソン・バトンが、SUPER GTの鈴鹿1000kmへの意気込みを語った。元F1チャンピオンのジェンソン・バトンは、8月26・27日に鈴鹿サーキットで開催されるSUPER GT 第6戦 “SUZUKA 1000km THE FINAL”のGT500クラスにTEAM MUGEN(MOTUL MUGEN NSX-GT)の武藤英紀、中嶋大祐とトリオを組み、第3ドライバーとして参戦することが決定している。
SUPER GT「鈴鹿1000km」参戦についてSUPER GTのマシンは、F1マシンに比べてどんな印象ですか?たいへん良い印象です。高速コーナーでこれほどタイヤがグリップするとは思っていませんでした。マシンのバランスにはずっと苦労していましたが、それでもグリップ力が素晴らしい。走りを楽しめました。NSX-GTは馬力がおよそ600ps、F1マシンは約900ps。パワーには大きな違いがあります。ドライビングスタイルも変わってくるので、この違いに馴れるには少し時間がかかりそうです。なぜなら、スピードを極端に落としてはいけないからです。コーナーを通じてスピードを保たなければいけません。17年間の自分のドライビングスタイルとはまるで異なりますが、これも勉強。とてもエキサイティングな気持ちです。GTマシンでの初めてのレースSUPER GTでの最大の困難は?マシンのフィーリングに馴れることですね。マシンバランスで言えば、僕がこれまで走ってきたF1マシンは、もっとフロントのグリップがしっかりしていました。まずは、クルマのリアルな動きに馴れることが大切だと思います。アンダーステアなF1マシンは私の好みではありませんでした。この部分では、もう少し調整する必要がありそうです。同時に、チームメイトである2人のドライバーと力を合わせて行かなければなりません。私はゲストなので、彼らの方向性になるべく合わせるつもりです。他のドライバーと一緒に作業するのはエキサイティングです。彼らには彼らの意見があるし、私にはもう少し異なった意見があります。F1での経験を生かして、鈴鹿1000kmで成績を残したいと思います。SUPER GTの魅力長年、SUPER GTを見てきたと伺いました。また「SUPER GTは、素晴らしい」と話す友人がいるとも伺いました。SUPER GTの魅力は何でしょうか?GT500には3社の大きな自動車メーカーが参戦し、4社のタイヤメーカーが競い合っています。才能豊かなドライバーがそろっていますし、日本人ドライバーも多くとても国際的な顔ぶれです。マシンのエクステリアデザインは魅力的で、もしも私が10代でNSX-GTに乗れたとしたら、うれしくて天まで舞い上がるほど。ものすごくカッコよくて、驚くほどスタイリッシュ。NSX-GTは、世界で最もクールなレーシングカーです。日本との関わりについて日本に特別な思い出が何度もあると伺いました。ファンの熱心な応援も知っています。これまでにどんな経験があったか、少し例を挙げてもらえますか?特別な思い出はいくつもあります。最初の思い出は、鈴鹿での出来事ですね。鈴鹿は、文句の付けどころがないコース。たしか1997年のカート大会(CIK/FIA WORLD CUP KART RACE IN JAPAN)の決勝レースで、私はトップを走っていました。しかし、チェーン切れで完走できませんでしたが、その時「アイルトン・セナ・メモリアルカップ」を受賞したんです。僕の攻撃的な走りを評価していただいた、とても特別な思い出です。2000年からF1グランプリに出場するようになりました。鈴鹿サーキットでの走行初日、私は、S字コーナーからダンロップ・コーナーの間で苦しんでいました。その結果をデータ分析した翌日のプラクティスで、このセクションの総合トップに立ち、予選5位になりました。初の鈴鹿グランプリで、とてもうれしかったのを覚えています。この日からこのコースの虜になり、鈴鹿サーキットでのチャレンジを心から愛するようになったのです。そして、最高の思い出といえば、2011年の日本GPでの優勝です。フェラーリのフェルナンド・アロンソ、それにレッドブルのセバスチャン・ヴェッテルが相手という三つ巴の激戦を制しました。レース終盤、私は燃料を使い果たしそうになり、燃料をセーブし始めたところで2人が追いついてきました。その結果、3人のドライバーがほんの2秒差でフィニッシュ。燃料を使い切った私はグランドスタンド前にマシンを停め、クルマから飛び降りてみんなに手を振りました。とても特別な瞬間でした。日本の観客のみなさんは、モータースポーツを心から愛する世界でもっともアツいファンです。みなさんと会えることを、いつも楽しみにしています。ひとりひとりのドライバーやチームも素晴らしい。レースが終わっても、ファンが観客席に残ってレースのリプレイを見るのは、おそらく日本だけでしょう。だからここに戻ってきてSUPER GTに参戦できるのは、本当に特別なことです。愛すべき日本の文化東日本大震災のあとに、募金を募ったそうですね?はい、被災地を訪れて、それから宮城県のSUGOのカートサーキットに行きました。そこで家族が被災したという、約25人の子供たちと過ごしました。そこで僕はカートをドライビングしました。子供たちのドライビングを見て、言葉を交わしました。英語と日本語でできるだけコミュニケーションを図りました。みんながレースへの情熱を持ち続けていることを知る、本当に素晴らしい体験でした。子供たちにとっては、気晴らしとなるよう、身近に集中できる存在があることは大切だったようです。そこには、レーシングドライバーとファンの関係を越えたなにかがあったような気がします。たとえば、日本文化への共感というような。日本文化は大好きです。興味深いのは、多くのF1ドライバーも日本が好きで、日本の方々に敬意を払っているということ。これほど愛されている国は、ほかにないかもしれません。2011年がそうでしたが、厳しい状況に陥っても強さを発揮できる。たとえ心が傷ついても強く前進できるという点において、私たちはたくさんのことを日本人から学んだと思います。本当に大変な時期だったと思います。僕は日本の文化を愛しています。日本食も大好きで、長い時間をかけて日本中を旅してきました。大都市ばかりではなく、地方の小さな街にも訪れました。広島にも行きましたね。とても楽しかったです。各地の名物も食べました。すべてが素晴らしい体験。日本のHondaとこれほど長期的に仕事ができたのは、本当に特別な体験で、一緒に多くの経験をしました。良いことも、悪いこともありました。でも、それをひとつのファミリーとして体験し...
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