アストンマーティンF1の将来について、ウィル・バクストンが極めて厳しい見方を示した。ホンダとの新体制やチーム運営を巡る不透明感が続くなか、仮に新たなチーム代表が就任しても、少なくとも今後1年から2年は結果を出せない可能性が高いと指摘している。3月末には、ジョナサン・ウィートリーがアウディを「即時退任」した直後から、アストンマーティンの新チーム代表就任説が浮上した。
現在その役職はエイドリアン・ニューウェイが担っているとされるが、仮に人事が動けば、ニューウェイは技術部門へ軸足を戻し、別の人物がチーム運営の重圧を引き受ける構図になる。しかしバクストンは、そもそも誰がその役割を引き受けたがるのかと疑問を投げかけた。バクストンが示した悲観的な見通しウィル・バクストンは「Up to Speed」ポッドキャストで、アストンマーティンのチーム代表職が魅力的な仕事には見えないと率直に語った。「僕たちの小さなWhatsAppグループで、アストンマーティンでエイドリアンがテクニカルディレクターに戻り、チーム代表の役職が空くかもしれないという話を最初に聞いたとき、僕の最初の反応は『いったい誰がそれをやりたがるんだ?』だった」「なぜなら、少なくとも今後1年、いや2年は、最終的に失敗することが分かっている仕事に踏み込もうとする人間がどこにいるのか、という話だからだ」バクストンはさらに、アストンマーティンとホンダの現状を、2015年にホンダがF1へ復帰した当初のマクラーレン時代と重ね合わせ、その状況は同等か、それ以上に深刻だと主張した。「アストンマーティンにおけるホンダの状況は災難だ。しかも、2015年にホンダが最初に戻ってきたときにマクラーレンが直面していた状況と同じか、それ以上に悪い」「2015年のホンダの失敗を修正するのに5年かかった」「彼らがグランプリで勝ったのは2019年になってからで、それは復帰5年目だった。そしてそれは、レッドブルに移った後の別チームでの勝利だった」「マクラーレン自身も、ホンダとの騒動と苦難を経て、グランプリ優勝を挙げたのは2021年になるまで待たなければならなかった」「だから、いまアストンマーティンのそのポジションに入るなら、少なくとも当面の間、もしかするとこの10年の残りすべてにわたって、完全に詰んでいると理解していなければならない」ホンダとの新体制にかかる時間アストンマーティンは、2026年F1シーズンの新パワーユニット規則と新シャシーレギュレーションを追い風に、一気に上位争いへ進出することを狙っていた。しかし実際には、チームはグリッド後方へ沈み、キャデラックと争うような位置にまで後退。さらに、信頼性トラブルも継続的に抱えている。バクストンの見立てでは、こうした状況は単なる短期的な不振ではなく、構造的な立て直しを要する問題だ。しかも現在のF1では、かつてのように資金力だけで遅れを取り戻すことはできない。予算上限下では“金で解決”できないバクストンは、ローレンス・ストロールの資金力があっても、いまのF1では状況打開の決定打にはなり得ないと語る。「ただ金を投げ込めばいいという話ではない」「ローレンス・ストロールは『私は神より金を持っている』と言って座っていられるかもしれない。だが結構なことだ。いまのF1には予算上限がある。10年前、15年前、20年前のように、ただ金を投げ込むことはできない」「プロセスが必要だし、自分たちがどこへ向かっているのかについて、しっかりした理解も必要だ」そしてバクストンは、もし最終的にローレンス・ストロールがすべてを差配し、その意向に従うだけの人物が求められているのだとすれば、なおさら有能な人材は近寄らないのではないかと踏み込んだ。「もしローレンス・ストロールが最終的にこれらすべてを監督していて、必要なのがイエスマン、操り人形、つまりローレンスが望むことを何でもやる人物だとしたら、いったい誰がその役割に踏み込み、そういう存在になろうとするんだ?」「もちろん、その代わりに巨額で非常に魅力的な給料は得られるかもしれない」「だが、成功したいという意思があり、ジョナサンがそうであるように、最高を目指し、レースに勝ち、世界選手権を勝ち取りたいと思うなら、2030年までにそれを実現できるのか? 僕はできないと思う」問われるのは人事より再建の道筋今回の発言が示しているのは、単なる新代表人事への懐疑ではない。アストンマーティンに必要なのは、肩書きを入れ替えることではなく、ホンダとの新体制をどう機能させ、限られた予算の中でどの順番で問題を潰していくのかという再建の道筋そのものだ。新しいトップが就くかどうかは注目点ではあるが、それ以上に重要なのは、その人物に結果を出せるだけの時間と裁量が与えられるのかという点だ。バクストンの厳しい言葉は、いまのアストンマーティンが直面している問題の深さを、そのまま映し出している。