アストンマーティンF1のチーフテクニカルオフィサー(CTO)エンリコ・カルディーレは、ホンダが「他メーカーよりも強くプッシュできる」と語った。2026年に向け、ホンダが唯一供給するチームがアストンマーティンであることが大きな強みになるという。アストンマーティンは2009年のフォースインディア時代からメルセデス製パワーユニットを使用してきたが、2026年からはホンダ製エンジンに切り替え、正式なワークスチームとなる。
エイドリアン・ニューウェイとカルディーレの加入、そして2023年5月に発表されたホンダとの提携によって、チームは大きな転換点を迎えている。カルディーレはポッドキャスト『Beyond the Grid』で次のように語った。「開発段階では、彼ら(ホンダ)は我々のリクエストに完全に集中してくれている。他チームとの妥協をする必要がない。供給先がひとつだけというのは大きなメリットだ」「また、供給量が少ない分、開発の自由度が高くなり、より積極的に開発を進めることができる。複数チームを相手にするよりも“攻められる”状況にあるんだ」ホンダの“アグレッシブな姿勢”に驚きホンダは過去4シーズンにわたりドライバーズタイトルを獲得しており、アストンマーティンにとってその実績は大きな期待材料となっている。カルディーレはフェラーリ在籍時には同チームのエンジン部門と協働していたが、現在は主にシャシー開発に集中しているという。「私は基本的にシャシー側の開発に集中しているので、ホンダの動きをすべて見ているわけではない」と前置きしつつも、「ただ、彼らのコミットメントと開発へのアグレッシブなアプローチには本当に驚いている」と称賛した。「彼らは非常にオープンで、我々のシャシー側からの要望にも柔軟に対応してくれている」2026年レギュレーションにも創造の余地2026年の新レギュレーションは「制約が多すぎる」との批判もあるが、カルディーレはむしろ創造性を発揮する余地があると指摘する。「2021年の新レギュレーションのときも同じ感覚を覚えた」とカルディーレは振り返る。「一見すると制限が多くて残念に思えるが、実際に取り組んでみると、創造的な発想を生かせる余地がある。新しい解決策を見つけ、開発の中でロード(空力的な荷重)を引き出す自由度が確かにあるんだ」「今回のレギュレーションも同じだ。最初は“厳しすぎる”と思ったが、実際に手を動かすと、開発に使える自由度が見えてくる」アストンマーティン×ホンダ体制の可能性カルディーレの言葉からは、ホンダとアストンマーティンの協力体制が非常に密接で、双方が2026年の新時代に向けて積極的に取り組んでいる様子がうかがえる。1チーム体制により、ホンダはアストンマーティン専用のPU開発に全力を注ぐことが可能になり、レッドブル時代には得られなかった“完全なワークス環境”が整う。エイドリアン・ニューウェイ、カルディーレ、そしてホンダ——この新たな技術トライアングルがどのようなマシンを生み出すのか、2026年はその真価が問われるシーズンとなる。