アストンマーティンF1が、エイドリアン・ニューウェイの元側近の一人をF1の世界に呼び戻し、シミュレーション技術の強化に乗り出した。The Raceが掴んだ情報によると、セバスチャン・ベッテルとの黄金時代にレッドブルのシミュレーションおよび解析部門を率い、ニューウェイと密接に協力していたジャイルズ・ウッドが、アップル社で自動運転技術に携わった後にF1復帰を決断し、アストンマーティンに加わったという。
ウッドは現在、アストンマーティンF1でシミュレーションおよび車両モデリング担当ディレクターを務めており、現在ニューウェイが課題として挙げているパフォーマンス領域の改善において、極めて重要な役割を担うことになる。ニューウェイは先月のF1モナコGPの際に、アストンマーティンのシミュレーターの相関精度が不十分であると明かしていた。「正直なところ、我々のツールの一部はまだ弱いと思う。特に“ドライバー・イン・ザ・ループ”型のシミュレーターは問題がある」とニューウェイはモナコで語った。「今のところまったく相関していないので、大幅な改善が必要だ。これは研究開発の根幹を担うツールであり、それが使えないのは大きな制約だ」「とはいえ当面は別の方法で対処し、並行して必要な改良に取り組んでいくつもりだ。ただし、正直に言えば、これは2年がかりのプロジェクトになるだろう」しかし今回、ウッドを迎え入れたことで、この問題の解決が予想よりも早まる可能性が出てきた。ニューウェイとともに2010年から2013年にかけてレッドブルを4連覇に導いた経験を持つウッドの復帰は、アストンマーティンにとって大きな後押しとなる。ウッドはF1におけるシミュレーション分野で非常に深い専門知識を持っており、2004年から2006年までマクラーレンでシミュレーションリーダーを務めた後、レッドブルへ移籍。2007年から2014年にかけてチーフエンジニアおよびシミュレーション・解析部門の責任者を歴任した。その後、2014年から2017年まではレッドブル・アドバンスト・テクノロジーズで勤務し、その後カリフォルニアのアップル社に移っていたが、今回ニューウェイとの関係を再び築くことを決断した。空力部門にも新戦力アストンマーティンはシミュレーション領域だけでなく、競合他社に後れを取っていると考えられる他の分野にも人材補強を進めており、空力部門にも新たなリーダーが加わった。その人物とは、ジョアッキーノ(ジャック)・ヴィノで、チーフ・エアロダイナミシストとしてチームに加入している。ヴィノは空力技術者としてトヨタおよびレッドブルでキャリアをスタートさせた後、短期間ルノーに在籍。その後2012年1月にメルセデスに移籍し、シニア空力技術者としての地位を確立。最終的には同部門の責任者に昇進した。彼は2024年11月にメルセデスを離れ、今年4月からアストンマーティンでの業務を開始している。アストンマーティンのチーム代表アンディ・コーウェルは、ヴィノとウッドの両名がすでに即戦力として機能しており、ニューウェイとともに開発を大きく前進させていると語った。「ジャイルズは一時F1を離れてカリフォルニアで働いていたが、今は我々のモデリングおよびシミュレーション領域を担当している」とコーウェルはThe Raceに語った。「彼ら2人とエイドリアン、そして既存チームとのやり取りを見ていると、チーム全体のエネルギーと意欲が明らかに高まっている」「アドリアンのようなキーパーソンに加え、こうした重要人物の加入が全体を活性化させている」「これは単に作業量が増えるという話ではなく、設定される目標自体が変わってくるということだ」