マックス・フェルスタッペンが2016年スペインGPでレッドブル昇格初戦優勝を飾ってから10年。レッドブルの育成責任者を長年務めたヘルムート・マルコが、当時のドライバー交代劇の内幕を振り返った。当時トロロッソでチームメイトだったカルロス・サインツも昇格候補だったが、マルコは迷わずフェルスタッペンを選択。しかし、その決断にはクリスチャン・ホーナーの強い反対があったという。
ダニール・クビアト更迭で動いたレッドブルF12016年シーズン開幕からわずか4戦。当時のレッドブルはメルセデス勢を追いながらフェラーリと争う立場にあり、ダニール・クビアトとダニエル・リカルドのラインアップで戦っていた。しかし、ヘルムート・マルコはクビアトのパフォーマンスに不満を抱いていた。「前年のクビアトは十分なパフォーマンスを見せていたし、とくに雨ではダニエル・リカルドより速い時もあった」とマルコは振り返った。「だが2016年になると、彼は以前のようなドライバーではなくなっていた。テスト初日からブレーキについて不満を口にしていたし、我々は何かを変える必要があると感じていた」そこで白羽の矢が立ったのが、当時トロロッソで走っていた18歳のマックス・フェルスタッペンだった。カルロス・サインツではなくフェルスタッペンを選択当時のトロロッソでは、フェルスタッペンとカルロス・サインツがほぼ互角の評価を受けていた。それでもマルコは、フェルスタッペンこそレッドブル昇格に相応しいと判断した。「マックスのチームメイトだったカルロス・サインツは、我々が彼を選ばなかったことに大きく失望していた」「だが我々にとっては非常に明確で簡単な決断だった」その一方で、レッドブル内部では反対意見も強かったという。「クリスチャン・ホーナーは、2016年のわずか4戦後にマックスを昇格させることに同意していなかった。彼は断固として反対していた」当時のフェルスタッペンは才能こそ高く評価されていたものの、経験不足やアグレッシブなドライビングによる接触の多さから、“まだ早すぎる”との声も少なくなかった。“狂っている”と言われた決断レッドブルの決断にはパドック内外から批判も集まった。「多くのライバルや批評家から大きなプレッシャーを受けた。彼らは『マックスはまだ若すぎる』『危険な決断だ』と言っていた」「彼らは我々を狂っていると思っていた。しかし我々は全員を黙らせた」その言葉通り、フェルスタッペンは昇格初戦となったスペインGPで優勝。メルセデス勢の同士討ちを尻目に、フェラーリ勢とリカルドを抑え切り、F1史上最年少優勝記録を打ち立てた。この勝利は、後の4連覇へと続く“フェルスタッペン時代”の始まりでもあった。カルロス・サインツは別の道へ一方、レッドブル昇格を逃したカルロス・サインツは、その後トロロッソを離れルノーへ移籍。さらにマクラーレン、フェラーリを経て、現在はウィリアムズで走っている。ワールドタイトル争いの機会こそ得られていないものの、複数勝利を挙げるトップドライバーへ成長した。結果論ではあるが、2016年当時のレッドブルには「フェルスタッペンを選ぶ未来」と「サインツを選ぶ未来」の2つが存在していた。その分岐点でマルコが下した決断は、F1の勢力図そのものを変えることになった。
全文を読む