マックス・フェルスタッペンが富士スピードウェイでSUPER GTのGT500車両をドライブした比較企画が、国内外のSNSで大きな反響を呼んでいる。動画では、現役GT500ドライバーの三宅淳詞が記録したベンチマークタイムに対し、フェルスタッペンが短時間で迫り、さらに上回る展開が描かれた。ただ、SNSで話題になったのは単純な“速さ比較”だけではなかった。
特に日本語圏では、「現役GT500ドライバーやSUPER GTそのものが軽く見られてしまうのではないか」という違和感も広がり、“SUPER GT軽視”を巡る議論へ発展している。雨の富士で行われたGT500比較企画今回の企画は、2026年3月25日に雨の富士スピードウェイで行われたプロモーションテストを素材にしたものだった。公開情報によれば、フェルスタッペンはGT500車両を初ドライブ。SUPER GT GT500クラスの現役ドライバーである三宅淳詞と同一車両をシェアし、比較形式のコンテンツとして公開された。三宅のベンチマークは1分44秒075。フェルスタッペンはインストレーションラップ1周後、最初の計測周で1分44秒142、続く周で1分42秒290を記録したとされる。数字だけを見れば衝撃的だ。富士初走行、GT500初ドライブ、さらにヘビーウエットに近いコンディションという条件の中で、一気にタイムを合わせ込んだフェルスタッペンの適応力には、国内外から驚きの声が上がった。ただし、この走行は正式競技ではなく、短時間のプロモーションテストだった。燃料搭載量、細かなセットアップ差、各ラップ時点の降雨変化など、厳密な比較に必要な情報は公開されていない。そのため、「完全に同条件だった」と断定することも、「比較自体に意味がない」と切り捨てることもできない状態となっている。日本語圏で広がった“違和感”日本語圏、特にX(旧Twitter)では、「フェルスタッペンは速くない」という反応はほとんど見られなかった。むしろ多かったのは、「この見せ方では三宅淳詞やSUPER GT全体が過小評価されてしまう」という声だった。その象徴となったのが、長年日本で戦ってきたジョアオ・パオロ・デ・オリベイラの投稿だ。オリベイラは、ウェットコンディションでは数分の間に数秒タイムが変わることもあると指摘。そのうえで、「数周でSUPER GTドライバーより約2秒速かったように見える演出」に違和感を示し、プロモーション企画であってもSUPER GTや現役ドライバーへの敬意は必要だという趣旨を投稿した。この投稿は日本語圏で大きく拡散され、“擁護論”の起点となった。また、日本人ドライバーの小合将司も、「マックスが凄いのは当然」と前置きしつつ、「三宅選手がレベル低いとか簡単に書くのはやめてほしい」と投稿。自身の経験を踏まえ、三宅を「バケモノ級の速さのドライバー」と表現した。さらに、「雨では2〜3秒の差が出ても不思議ではない」と条件差についても言及している。興味深いのは、こうした声が“フェルスタッペン否定”ではなかったことだ。議論の中心は、「フェルスタッペンは異常に速い」という前提を認めたうえで、「だからといってGT500や三宅淳詞を低く見るべきではない」という点にあった。三宅淳詞本人は前向きな姿勢一方で、この議論が全面的な炎上へ発展しなかった理由のひとつが、三宅淳詞本人のスタンスだった。公開コメントの中で三宅は、「同じクルマをシェアしてどう違うか見たかった」「すごくワクワクしたし、楽しかった」と前向きに振り返っている。つまり、日本語圏で広がった擁護論は、“本人の怒りの代弁”というより、「見ている側が文脈補正を行っていた」という性格が強かった。また、国内モータースポーツライターも、「ヘビーウエット」「全開アタック」という条件を前提に論じており、レース文脈を理解している層ほど、この比較を単純な序列として受け取ってはいなかった。英語圏では“Max is an alien”が主流一方、英語圏ではRedditやYouTubeを中心に、フェルスタッペンの適応力を称賛する声が圧倒的多数だった。特に、「富士初走行」「GT500初乗車」「豪雨に近いウェット」という条件下で、ほぼ即座にプロドライバー級のタイムへ到達した点に驚きが集中した。Redditでは、“Max is an alien(マックスは別次元の存在)”という表現も多く見られた。ただ、英語圏でも異論が皆無だったわけではない。「resident pro(現役プロドライバー) を embarrassing(恥をかかされた存在) に見せる構図ではないか」という声や、「条件差を無視した比較ではないか」という指摘も一定数存在した。また、GT500そのものに対する評価は非常に高く、「prototype-like(プロトタイプカーのよう)」「LMP2並み、あるいはそれ以上」といった表現も見られた。つまり英語圏では、「GT500は世界トップレベルの箱車カテゴリー」であることを認めたうえで、「それでもフェルスタッペンが凄かった」という受け止め方が主流だった。議論を拡大させた“見出し”今回の論争をさらに拡大させたのが、一部海外メディアによる強い見出し表現だった。“conquers Fuji(富士を制圧)”“stuns in Super GT test(SUPER GTテストで衝撃を与える)”といった表現は、プロモーション色は強いものの、本文では条件差にも触れていた。しかし、“completely smashes Super GT rival(SUPER GTのライバルを完全粉砕)”という表現になると、三宅淳詞個人だけでなく、SUPER GT全体を「叩き潰された側」として固定しやすい。日本語圏で“SUPER GT軽視”という言葉が広がった背景には、こうしたフレーミングも影響していたとみられる。問われたのは“速さ”ではなく“敬意”今回のSNS論争を通じて見えてきたのは、フェルスタッペンへの反発ではない。むしろ、日本語圏でも英語圏でも、彼の順応力や才能を認める声は非常に多かった。対立が生まれたのは、その称賛が「三宅淳詞は大したことがない」「GT500はこの程度」という単純な物語へ接続された瞬間だった。GT500が世界トップレベルの箱車カテゴリーであることと、フェルスタッペンが異常な適応力を見せたことは矛盾しない。また、今回の企画自体は、あくまでレッドブルによるエンターテインメント性の強いプロモーションコンテンツでもあった。正式競技や公式比較テストではなく、“異なる世界のトップドライバーとGT500車両を組み合わせたらどうなるか”を楽しむ企画として制作された側面も大きい。だからこそSNSでは、「フェルスタッペンの凄さを楽しむ動画」と受け止める声がある一方で、「その見せ方次第ではGT500や三宅淳詞へのリスペクトを欠いて...