マックス・フェルスタッペンは、F1スペインGP終盤に起きたメルセデスのジョージ・ラッセルとの接触について、「正しくなかったし、起きるべきではなかった」と認めた。レース後にInstagramで心境を語り、フラストレーションによる判断ミスだったことを明かしている。この接触により、フェルスタッペンは10秒のタイムペナルティとペナルティポイント3点を科され、累積11点に。出場停止となる12点まであと1点に迫り、レッドブルF1にとっても深刻な局面を迎えている。
フェルスタッペンのレースは、61周目のセーフティカー明けのリスタートでシャルル・ルクレールに抜かれたことで流れが崩れた。レッドブルは3ストップ戦略を採用しており、終盤はハードタイヤで走行していたが、周囲はソフトタイヤという不利な状況だった。ターン1ではラッセルがインから強引に仕掛け、フェルスタッペンはエスケープロードに逃れてポジションをキープした。フェルスタッペンはこの接触について当初「自分が前にいた」と主張し、ポジションを返すよう指示したチームに反発。無線では次のようなやり取りがあった。ジャンピエロ・ランビアーゼ(レースエンジニア): 「マックス、ラッセルを前に行かせてくれ」フェルスタッペン: 「いや、俺のほうが前にいたぞ。何だよこれ」ランビアーゼ: 「私の助言としては、彼を行かせたほうがいい」フェルスタッペン: 「俺が前にいたんだ。あいつが俺をコース外に押し出しただけだろ」ランビアーゼ: 「でもそれがルールだ。そういうルールで戦わなきゃならない。残念だが、ルールはルールだ」その後、フェルスタッペンはターン5手前で減速し、ラッセルにポジションを譲るように見せかけたが、ラッセルが完全に前に出る前に再加速。左リアに接触する形となり、再び順位を取り戻そうとした。この行為には多くの批判が集まり、ラッセル自身も「非常に意図的だった」と語っている。「シムレースやiRacingでは何度も見たことがあるが、F1の実戦で見るのは初めてだ。僕たちは命を懸けて走っている。F1マシンの安全性に甘えるべきではない」「意図的だと判断されるなら、スチュワードは厳しく対処すべきだと思う」さらに、元F1王者のニコ・ロズベルグは、フェルスタッペンには失格(ブラックフラッグ)処分が相応しかったと主張。「非常に意図的な報復に見えた。相手がぶつけてきたと感じて、わざとぶつけ返す。そんなのは全く受け入れられない行為で、本来ならブラックフラッグだ。相手を待って、わざとぶつけるような行為は、即失格に値する」これらの批判を受け、フェルスタッペンはレース翌日にInstagramで次のように投稿している。「バルセロナでは戦略もレース内容もエキサイティングだった。セーフティカーが出るまではね」「終盤のタイヤ選択と、セーフティカー後のいくつかの出来事が、僕のフラストレーションを増幅させてしまい、結果として正しくない、起きるべきではない行動につながってしまった」「僕は常にチームのために全力を尽くしているし、感情的になることもある。勝つときも負けるときも、チームとして一緒にある。モントリオールでまた会おう」フェルスタッペンは、レース出場停止処分を回避するために、カナダとオーストリアでの2戦ではクリーンなレースを展開する必要がある。一方、レッドブルF1代表のクリスチャン・ホーナーはフェルスタッペンを擁護した。「まず彼はルクレールにストレートで接触され、さらにターン1でジョージにダイブボムを喰らった。今のレギュレーションでは、前輪の位置がすべてなんだ」「ドライバーたちはそのルールを理解していて、それを前提に走っている。ただ問題は、あの瞬間ジョージは本当に制御下にあったのか? コーナーを曲がれたのか? ということだ」「今シーズン、似たようなケースではペナルティが出たり、出なかったり、スチュワードの裁量次第になっている。だからこそ、今回は『仕方ない、ポジションを譲ろう』と判断した」ホーナーはまた、フェルスタッペンのポイント状況について「絶対に何も保証はできない。あと数戦は“クリーン”に走るしかない」と述べている。なお、フェルスタッペンに科されている11点のうち、最初に失効するのは6月30日(2024年オーストリアGPでのノリスとの接触による2点)。それまではカナダとオーストリアの2戦を無違反で乗り切る必要がある。万が一出場停止となった場合、レッドブルはリザーブドライバーのリアム・ローソンやアイザック・ハジャー、あるいは岩佐歩夢やアーヴィッド・リンドブラッドといった育成ドライバーの起用を迫られる可能性もある。