マックス・フェルスタッペンは、F1エミリア・ロマーニャGPの決勝で、1周目に見せた鮮やかなオーバーテイクによって勝利の布石を打った。レッドブルF1のエースは、イモラのタンブレロ・シケインでオスカー・ピアストリをアウトから抜き去り、そこから一度もリードを譲らなかった。
フェルスタッペンはスタート直後のオーバーテイクを得意としており、今回は2025年イモラでの最新の一撃とあわせて、これまでに見せた5つの印象的な1周目を振り返る。イモラ 2021年場所は今回のピアストリとの勝負が繰り広げられたイモラ――つまり「アウトドローモ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ」。フェルスタッペンはこのサーキットで4年連続優勝を果たしており、その最初の勝利は2021年、ルイス・ハミルトンとの激しいタイトル争いの最中だった。その年の開幕戦バーレーンでは、フェルスタッペンが一度はトップに立ったがトラックリミット違反によりポジションを返上。そして第2戦となったイモラでは、両者にとって初めての直接対決が訪れた。ウェットコンディションのなか、フロントロウはハミルトンとセルジオ・ペレス。フェルスタッペンは3番手スタートだったが、好スタートを切り、タンブレロ・シケインに到達する頃にはポールのハミルトンに並んでいた。フェルスタッペンはイン側を取り、ハミルトンはアウト側で抵抗を試みたが、シケイン後半でラインが交錯し、ハミルトンは縁石に乗ってフロントウイングを損傷。この一撃でフェルスタッペンはトップに立ち、荒れたレースを制することとなる。ハミルトンは途中でグラベルにはまりながらも赤旗に救われ2位でフィニッシュした。メキシコ 2021年2021年シーズンが白熱していた頃、F1はメキシコへと向かった。直前のオースティンで名勝負を演じたばかりのフェルスタッペンは、高地でレッドブルに有利とされるメキシコでも勝利が必要だった。しかし予選では3番手にとどまり、フロントロウはメルセデス勢のボッタスとハミルトン。だがスタートでは、フェルスタッペンがボッタスのスリップストリームを活用し、外側のラインから鮮やかに2台を抜き去った。イモラ2025と同様、よりグリップのあるラインを選んだことで、メルセデス勢よりも遥かに遅くブレーキングできたことが鍵だった。ボッタスはリカルドに接触され後退。一方のフェルスタッペンは終始安定した走りで16秒差をつけて勝利を収めた。ベルギー 2022年2022年、F1は新レギュレーションによりグランドエフェクトカー時代へと突入。メルセデスは苦戦し、フェラーリが序盤をリードしたが、夏休み明けのスパでは既にレッドブルが圧倒的な強さを見せていた。予選ではトップタイムを記録したものの、エンジン交換によるペナルティでフェルスタッペンは14番手スタート。しかし、1周目終了時点で既に8位まで浮上していた。ガスリーのグリッドが空いていたこともあり、フェルスタッペンはスタートで複数台を一気にパス。その後も危なげない走りで12周目にはチームメイトのペレスを抜いて首位へ。14番手スタートからの勝利は、圧巻の一言だった。日本 2022年これは厳密にはオーバーテイクではないが、鈴鹿の第1コーナーでのディフェンスは、間違いなく1周目の名シーンに数えられる。雨が降るなか始まったレースで、ポールのフェルスタッペンに対し、ルクレールがイン側から鋭く並びかける。だがフェルスタッペンは外側から攻め、グリップを最大限に活かしてリードを死守。スタート直後の視界確保が重要だと考えていたフェルスタッペンにとって、ここで前に出ることは極めて重要だった。その後レースは赤旗中断となり、再開後は27秒差での独走勝利。表彰台裏では、自分がチャンピオンになったのかどうか困惑する様子も見られた。ブラジル 2024年2024年は、2023年のような圧倒的な支配とはいかず、フェルスタッペンはタイトル争いに苦しんでいた。中盤以降はマクラーレンが支配的となり、チャンピオン決定にはもう1勝が必要だった。しかし予選Q2で赤旗に阻まれ、さらにPU交換のペナルティも受けて17番手スタートに。「部屋に戻った時はものすごくイライラしていた」とフェルスタッペンは語ったが、レースでは序盤から攻勢に出る。1周目のセナSで11位まで浮上、さらにホームストレートでハミルトンを抜いてポイント圏内へ。このレースはまさに彼のキャリアでも最も完璧な1戦のひとつとなり、最終的にはラスベガスでタイトルを決める足がかりとなった。イモラ 2025年そして最新の例が2025年のイモラ。今回はフロントロウスタートだったが、スタートで出遅れてジョージ・ラッセルに先行され、一時は3番手に。だが冷静に状況を分析したフェルスタッペンは、RB21を巧みにポジショニング。左右のミラーで周囲を確認し、ラッセルには外側のラインを渡さず、ノリスにも隙を与えなかった。その結果、フェルスタッペンはレーシングラインを確保し、ピアストリより10メートルも遅くブレーキング。30km/hのスピード差を武器にタンブレロを駆け抜けて首位を奪取した。このあと彼は予想以上のペースでレースを支配。4年前とは全く異なる展開だったが、もしかすると、今季のタイトル争いも再びアブダビ最終戦までもつれ込む兆しかもしれない。今後の展開に注目が集まる。
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