レッドブル・ホンダF1のマックス・フェルスタッペンも所属する世界を代表するシミュレーションレーシングチームのひとつであるTeam Redlineを率いるマネージャーのドム・ドゥハンと所属ドライバーのグレアム・キャロルが、シミュレーションを取り入れてスキルアップを図るプロドライバーが増えている理由について解説した。新型コロナウイルスの世界的な流行によってモータースポーツ界が停止状態にあるなか、オンライン上でレースを戦うシミュレースが注目を集めている。
世界を代表するシミュレーションレーシングチームであるTeam Redlineが、バーチャルワールドがリアルワールドにもたらすメリットについて解説した。1:レーストラックを深く理解できる最近のレーシングシミュレーターに組み込まれているレーストラック再現テクノロジーは非常に優秀で、iRacingやrFactor 2のようなシミュレーターは現存するレーストラックをレーザースキャンで取り込んでいる。あらゆるバンプやバンク、縁石が完全再現されているのだ。つまり、そのようなレーシングシミュレーターで走り込んでおけば、どこでどう走れば良いのかを完全に理解した状態で現実世界のフリープラクティスに臨めるのだ。ドム・ドゥハンは次のように説明している。「たとえば、iRacingでは縁石の攻略法も学べるので、現実世界で縁石に乗り上げた時も冷静に対応できます。焦ってタイムを落とすことはありません」「また、特定のコーナーの攻略法も学べるので、現実世界のレースでスピードを維持できます。練習通りの走りをするだけで良いのです」「これがレーシングシミュレーターのメリットだと思います。現実世界のレーストラックを走るドライバーに与えられた時間は限られていますが、すぐに目標を達成できるのです」2:安定した走りを学べる“アーケード” 的なメンタリティでレーシングシミュレーターをプレイしている人は多い。マシンをスライドさせたり、ライバルマシンに接触したりしている彼らは、バーチャルレーシングを楽しいものとして扱っている。しかし、グレアム・キャロルは、レーシングシミュレーターに真剣に取り組めば、レーシングにおける最も重要なスキルのひとつ、安定性を得ることができるとしている。グレアム・キャロルは次のように説明する。「キッズたちはレーシングシミュレーターでライバルマシンを押し出したり、遊んだりしてしまうけど、もう少し真剣に取り組んで現実世界のスティントと同じように走れば、スキルを高めることができるんだ」「遅い3ラップ、速い2ラップ、遅い1ラップみたいなバラバラのドライビングをする代わりに、安定したタイムで10ラップこなせるようになる」また、ドム・ドゥハンは集中力を鍛えられるとしている。「通常、40分以上ドライブすれば集中力が失われてしまいますが、シミュレーターで十分な時間走っておけば、レーストラック上で集中を維持できるようになります。常に集中していることがレーシングシミュレーターでは重要ですね」「Team Redlineのドライバーは、テストで相当なラップ数を走っています。こうすることで、レース本番で集中を維持できるようにしているのです」「現実世界では、耐久系レースでも気を抜ける瞬間はありません。どのラップも全力です。ペダルから足を離せる瞬間などありません」3:レースに必要なスキルが学べるレーシングシミュレーターでは、前述のフェルスタッペンのオーバーテイクのような、現実世界では中々チャンスに恵まれない美しいアクションをとことん練習できる。しかし、レーシングシミュレーターはオーバーテイクほど派手ではない部分の練習にも役立つ。たとえば、ファーストコーナーでのポジショニングや、後方から迫るライバルマシンのブロックの方法なども練習できるのだ。ドム・ドゥハンは「ポジショニング、ラインを維持する方法、インの取り方なども学べます。また、コーナーの途中で後方のライバルマシンを減速させて、出口でのオーバーテイクを防ぐ方法も学べますね」と説明している。4:必要なギアとソフトを揃えたあとは “無料”レーシングマシンが買えるほどの大金をつぎ込んだレーシングシミュレーター用セットアップを誇っているゲーマーが世の中にいるのは事実だ。しかし、必要なハードウェアとソフトウェアを揃えてしまえば、レーシングシミュレーターに維持費は生じない(DLCなどの不定期コストが発生しない限り)。これを現実世界でレーシングマシンを所有することと比較してみよう。レーシングマシンは輸送、管理、保険、カラーリング&デザイン、燃料、タイヤ、パーツ、修理、レーストラックの使用、出走登録、メカニックなどにお金がかかる。バーチャルレーシングへの変更を真剣に考えるようになるのは当然だ。ドム・ドゥハンが説明する。「モータースポーツの世界は資金力が全てです。ここ5年はその傾向が顕著ですね。これを踏まえると、レーシングシミュレーターはある意味モータースポーツを最も純粋な形で維持している存在と言えます」「誰でも参加できますし、誰もが世界で活躍できます。一方、現実世界のモータースポーツは、どんなに優れた才能を持っている人でも、一流のレーシングドライバーになるためには、相当な資金力が必要になります」最近のレーシングシミュレーターは、カートのような手頃なモータースポーツにも進出している。iRacingの最新DLF『KartSim』は、正確に再現されているカートシミュレーターで、若手カートレーサーたちがスキルを磨いている。しかし、鵜呑みにしてはいけない。グレアム・キャロルが説明する。「カートシミュレーターは何回も試してきたけど、かなり酷いクオリティのものもあった。でも、『KartSim』は素晴らしい。このシミュレーターでカートに飛び乗れば、あっという間に美しいドライビングができるようになる。本当さ」「コーナーの攻略法やリズムの乗り方が簡単に学べるんだ。レーストラックを初めて走る時に無駄が出ないのさ。自分のスキルを高める素晴らしいツールだと思うよ」5:好きなだけ走れる近年は、F1チームがレーストラックでテストできる日数が限られているので、ドライバーたちは他の方法でスキルを維持しなければならなくなっている。これまでは、カートに乗ってスキルを維持するドライバーが一般的で、アイルトン・セナに至っては、ブラジルに自分専用のカートトラックを建造したほどだ。しかし、最近のトップドライバーたちは自宅にレーシングシミュレーターを置くようになっている。ドム・ドゥハンが続ける。「全ては調子を維持するためです。最近はレーストラックでテストできる時間が限ら...
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