TOYOTA GAZOO Racingは、2018年から2019年にかけて開催予定のFIA世界耐久選手権(WEC)スーパーシーズンに参戦。最先端ハイブリッド車両であるTS050 HYBRIDでこのシリーズに臨む。冬のオフシーズンの間、チームは3日連続の走行テストを4回行い、通算21,000kmを走破。着実な手応えを得て、WECシーズン最初の公式イベントとして、明日から南仏ポール・リカールで行われる合同テストに参加する。
今回の合同テストは、現地時間6日(金)午前10時(日本時間6日午後5時)から7日(土)午後4時(同7日(土)午後11時)までの連続30時間に及ぶ走行枠が設定されている。チームはこの2018年仕様のTS050 HYBRIDと共に全8戦で競われる2018-2019スーパーシーズンのWECに挑むが、その最大目標はもちろん、トヨタが未だ成し遂げていないル・マン24時間レースでの勝利。マイク・コンウェイ、小林可夢偉とホセ・マリア・ロペスの3名がTS050 HYBRID #7号車で、セバスチャン・ブエミと中嶋一貴に、新たにフェルナンド・アロンソを加えた3名が#8号車でシーズンを戦う。また、アンソニー・デビッドソンは、チームの一員としてリザーブ&開発ドライバーの役割を担う。TOYOTA GAZOO RacingはLMP1クラスで唯一の自動車メーカーによる参戦チームとなる。今季の新たな技術規則では、同じLMP1クラスのライバルとなるノン・ハイブリッド車両には、1周あたり約69%多いエネルギー量(最大燃料量)が与えられ、彼らとレースを戦うTS050 HYBRIDにとっては大いに挑戦し甲斐のある条件になった。ル・マン24時間レースのサーキットの1周(13.6km)あたりでは、LMP1クラスのノン・ハイブリッド車両が、最大210.9MJのエネルギー量(約5.2kg/周の燃料量)になるのに対し、TS050 HYBRIDは、最大124.9MJ(約3.1kg/周の燃料量)となる。また、エンジンに供給できる最大瞬時燃料流量は、TS050 HYBRIDが毎秒22.8g(毎時80.2kg相当)になるのに対し、LMP1ノン・ハイブリッドのライバルは毎秒30.5g(毎時110kg相当)。車両重量は、ハイブリッド車両に対しライバルは、45kg軽量となる。これだけの制限を受けて戦うTS050 HYBRIDは、言い換えるとその高い技術力を物語る証とも言える。TOYOTA GAZOO Racingはこのチャレンジングな条件を肯定的に捉え、レースの現場という極限の条件下で、ハイブリッド・パワートレーンの更なる効率と性能を追求し、トヨタの「もっといいクルマづくり」というミッションに貢献していく。このミッションは、今年初めに発表された、GRスーパースポーツコンセプトで一つの具現化を見せた。このコンセプトカーは、WEC参戦によって培われた最先端テクノロジーを受け継ぎ、多くの部品をTS050 HYBRIDから流用。ハイブリッドシステムと、高性能希薄燃焼エンジンによって、低燃費でありながら1000馬力の最大出力を生み出し、その開発車は、既に実走行テストをこなしている。TS050 HYBRIDはWEC参戦と共に効率と性能の大きな進化を遂げた。昨年型のTS050 HYBRIDは、2012年のトヨタのハイブリッドレースカーデビュー時と比較して、35%の燃料削減を達成しながらも、ル・マン史上最速のラップタイムをマークした。これは、非常に高い熱効率を実現したエンジンやハイブリッドシステムなど、レースの現場で培われた技術によって達成されたもの。ブレーキング時に発生する熱エネルギーを、前後輪に搭載されたモーター/ジェネレーターによって回収し、電力として再利用する(キネティック)エネルギー回生も、WEC参戦によって進歩した重要な基幹技術であり、ここで回収されたエネルギーによって、パフォーマンスが向上し、燃費向上にもつながる。市販ハイブリッド車市場のリーダーとして、トヨタがこれまでに販売してきたハイブリッド市販車の販売台数は、1100万台を越えた。絶え間なく続く市販ハイブリッド車両開発において、WEC参戦は、技術面だけでなく、人材育成面で開発に携わる「人づくり」も進めることが出来た。今シーズンに臨むTS050 HYBRIDは、最大1000馬力を誇るハイブリッド・パワートレーンの信頼性の向上と、更なる燃料規制に挑戦すべく、改良されたが、それ以外の部分は、3連勝でシーズンを締めくくった2017年仕様と大きな変化はない。新たなシーズンを迎えたTOYOTA GAZOO Racingにとっての目標は、WECのチャンピオン争いと共に、何度も阻まれてきたル・マン24時間レースで勝利を勝ち取ること。今シーズンは、5月5日に決勝が行われるベルギー、スパ・フランコルシャンで幕を開け、2019年6月15-16日のル・マン24時間レースでシーズンを終えることになる。村田久武 (TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表)チーム全員が今シーズンへ向け、最速で且つ、信頼性のある車両を作り上げるために全力を尽くして準備して来ました。トヨタの東富士研究所やケルンのTMGのスタッフにはこれまでの頑張りに対して労いを伝えたいと思います。自身の目標はル・マン24時間レースの勝利とシリーズチャンピオン獲得ですが、それ以上に、このプロジェクトを通して、トヨタが唱える『もっといいクルマづくり』への貢献を果たしていきたいと考えています。我々は開発を重ねて来たハイブリッド車両で2006年からレースに参戦して参りましたが、当初は、ハイブリッド量産車から多くの技術を学んでおりました。その後、ハイブリッド・レースカーの開発が進むにつれて、そこから得られた様々なノウハウやテクノロジーを量産車へ導入出来るようになりました。今年の年初に公開された近未来の量産を前提にしたGRスーパースポーツコンセプトの登場には我々全員が誇りを抱いています。レースに勝利するだけでなく、このクルマを含めた量産車への技術展開も我々に課された重要なミッションであると認識しています。耐久レースは、そのためのとても適した手段だと思っています。ロブ・ルーペン チーム・ディレクター)来るシーズンは、1シーズン2回のル・マン24時間レース開催など、様々な面で特別なものになると思いますし、我々全員が開幕戦を待ち焦がれています。また、フェルナンドがWECの一員として加わることで、シリーズの更なる盛り上がりに期待しています。今季の技術規則変更は我々にとって、これまでにない挑戦となるでしょう。2012年に参戦を開始して以来、我々はハイブリッド・パワートレーンが鮮烈なパフォーマンスと効率の向上を実現することを示してきました。そして今、LMP1クラスの新たなライバルに対して、更なる高効率での戦いが求められています。ライバルは我々よりも多いエネルギー量(最大燃料量)...