11月27日(土)~28日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で2021年度SUPER GTシリーズ最終戦(第8戦)が開催され、GT500クラスに5台のNSX-GT、GT300クラスに3台のNSX GT3が出走した。このレースでは競技規則により全車両に対するサクセスウエイトが0kgにリセットされ、車両本来のパフォーマンスで戦うことになる。
GT500クラスに出走するNSX-GT勢は、シリーズポイントランキングで#1 STANLEY NSX-GTの山本尚貴がトップ、牧野任祐が2番手(シリーズ序盤で牧野が欠場したため)、#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が3番手、#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が4番手と上位を占めた状態でシリーズ最終戦を迎えたが、直線の長い富士スピードウェイは、敏捷なコーナリングを得意とするNSX-GTにとって必ずしも適したサーキットではない。週末は秋晴れながら寒冷前線の影響で冷え込み、気温、路温とも低下するコンディションとなった。土曜日に行われた公式予選でNSX-GT勢は、#1 STANLEY NSX-GT(山本/牧野)が2番手、#8 ARTA NSX-GT(野尻/福住)が6番手につけたものの、#17 Astemo NSX-GT(塚越/バゲット)は10番手、#16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹)は12番手、#64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)は15番手にとどまった。日曜日の決勝レースは午後1時にスタートが切られた。シリーズチャンピオンを目前にしている#1 STANLEY NSX-GT(牧野)は、ストレートスピードの伸びるライバル車に先行を許し序盤4番手に後退するが、その順位でも十分に王座を奪取できる計算だった。#1 STANLEY NSX-GT(牧野)は4番手のポジションを守って義務周回数となる22周を走ってピットイン、ドライバー交代を行った。マシンを受け継いだ#1 STANLEY NSX-GT(山本)は、事実上のポジションをいったんは一つ落としたが、レース折り返しとなる33周目までには4番手に復帰。チャンピオン奪取を視野にポジションを守って周回を重ねた。ところが、フィニッシュまで15周となった51周目の第1コーナーに進入したところ、GT300マシンに内側から押し出されるようなかたちで接触され、右フロント部を破損。緊急ピットインを余儀なくされた。一方、#8 ARTA NSX-GT(福住)は、スタート後ペースが思うように上げられない中、順位を一つ上げて5番手でドライバー交代のためピットインした。しかし、ピット作業中、ドアにトラブルが発生して約10秒ピットアウトが遅れ、事実上の順位は10番手まで下がってしまった。そこからの#8 ARTA NSX-GT(野尻)は猛然と追い上げ、オーバーテイクを繰り返してNSX-GT勢最上位の6位でレースを完走した。シリーズポイントランキングでは今回優勝して大量得点に成功した36号車に届かず、ランキング2位に終わった。アクシデントのあと、ピットインしマシンを修復してコースへ復帰した#1 STANLEY NSX-GT(山本)はシリーズチャンピオン争いから脱落、7周遅れの14位でレースを完走したが無得点に終わってランキングは3位に後退。シリーズチャンピオン連覇はならなかった。佐伯昌浩 (株式会社本田技術研究所 Honda GT プロジェクトリーダー)「1年間応援ありがとうございました。今回1号車は、チャンピオンを獲るために淡々とレースをしていたところ、避けようのないアクシデントで惜しくも戦いから脱落することになってしまいました。8号車はレースでのペースが悪くなかったのですが、ピットでのトラブルで遅れてしまったのが残念です。目の前にあったタイトルは逃がしてしまいましたが、この1年、NSX-GTには大きなトラブルが出なかったということを見ても信頼性についてはしっかり仕上がったと感じましたし、サクセスウエイトなしの真っ向勝負で富士のフロントローに並べるだけのパフォーマンスが発揮できたことなど、ポジティブな手応えもありました。来季に向けてもっと強いクルマに仕上げようと思います」野尻智紀(ARTA)「予選はポールポジションを狙っていたので悔しい結果になりました。ただ、直近2レースの連勝もポールポジションからではなかったので、レースさえしっかりやれば上がっていけるという自信はありました。実際、決勝では上がれるチャンスがあったと思うのですけど、ピット作業で手間取ってしまって大きく順位を落としてしまいました。そこから必死で追い上げたのですが、タイヤを使いきってしまい終盤はペースを落とさざるをえませんでした。でも、こういう厳しい戦いの中でこそ本当の強さが問われると思うので、もっともっと上を目指して強くなるためにがんばっていきます。この壁は必ず乗り越えられる壁だと信じています。1年間、応援ありがとうございました」福住仁嶺(ARTA)「土曜日午前中のフリー走行から、細かいところに修正しなければならない課題を感じていました。予選でも同じような問題が消えず、自分が担当したQ2では思ったとおりのタイムが出ず結果的に6番手に終わってしまいました。とはいえ、富士の決勝レースでは何が起きるか分からないので、気持ちを切り替えて土曜の夜はロングラン向けのセッティングについて、夜遅くまでエンジニアさんにもつきあってもらって考えました。その結果、いくらかは改善できたのですが問題は残っていて、最初のスティントで一つ順位を上げることはできたものの、それ以上は何もできないまま野尻さんにバトンタッチしました。ピット作業中にトラブルがあってそこでロスして遅れましたが、野尻さんが熱い走りで少しずつ順位を上げてくれて、結果的に6位でフィニッシュしてランキング2位で終われました。あともう少しでしたが、ライバルも本当に速かったので、来年に向けていろいろ考えて、自分自身ももっと強くなりたいと思います」
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