佐藤琢磨が、2016年 インディカー 最終戦 ポコノのレース週末を振り返った。佐藤琢磨の2016年ベライゾン・インディカーシリーズは、最終戦ソノマで力走を見せた末に14位でフィニッシュして幕を閉じた。これは、佐藤琢磨にとってもAJフォイト・レーシングのメンバーにとっても、決してエキサイティングなレースとはいえなかった。
それでも佐藤琢磨が示したパフォーマンスは決して悪くなかったし、ややギャンブル的な側面を持つレース戦略が、今回はNo.14ダラーラ・ホンダの順位を上げるのにあまり役に立たなかっただけともいえる。過去には、こうした努力が実を結んだこともあった。今回、佐藤琢磨は予選を15番手で終えたが、2014年にはこれよりも低いポジションの20番手からスタートして4位でフィニッシュしている。また、2015年のレースでは18番手から8位まで浮上した。しかし、今年は佐藤琢磨が思うようなタイミングでイエローが提示されなかったのである。「戦略面に関していえば、今週末は運が悪く、そしてタフだったといえます」と佐藤琢磨。「僕らは懸命にレースを戦いましたが、それでも及びませんでした。あとほんの少しのスピードが必要だったのです。ときにはレース戦略の妙で好成績を得られることもありますが、その場合は自分たちにとって都合のいいタイミングでイエローが提示される必要があります。そうでなければ、予選結果がその週末における調子の具合を示していることが多いので、残念ながら僕たちはあまり速くはありませんでした」レースの1週間前、AJフォイト・レーシングはソノマでのテストに参加していた。「テストができたことはよかったと思います。僕たちは新しいことを学び、新しい考え方に基づくロードコース用セッティングを試すことができました。でも、ソノマは本当にタフなコースです。まず、グリップがとても低く、このためファイアストンはシーズン中に使われるタイアのなかでももっとも柔らかいコンパウンドを今回持ち込みました。おかげで、最初の1〜2周は高いグリップが得られるのですが、その後は激しいデグラデーションに見舞われ、スティント中のバランスシフトは極めて大きなものとなります。このためスティント中にラップタイムが2秒も3秒も落ち込むことがありますが、これはとても大きな低下です」「ソノマ周辺はワインの名産地としても有名で、1年を通じて好天に恵まれます。これはレースをするうえで恵まれているだけでなく、コース外でも素敵なレストランでおいしい食事やワインを楽しめることを意味しています。そのかわり、コースは埃や砂に覆われていて、これがドライバーにとっては大きなチャレンジとなります。テストを行なったのは1週間前のことですが、それでもコースコンディションはまるで異なっていました。ただし、僕たちには良好なベースセットを作り上げることができたので、セッションごとにそれを煮詰めていき、順調に進歩することができました」各ドライバーは金曜日に新品のファイアストン・タイアを3セット使うことができた。佐藤琢磨は最初のセッションで2セットを使って8番手となったが、次のセッションでは1セットしか使えなかったため、17番手に終わった。土曜日に行われた3回目のプラクティスでは、佐藤琢磨の相対的な速さをよりはっきりと示すことができ、12番手となった。「他のドライバーに比べて、僕たちはたくさん走るとともに、より多くの周回数をこなしており、ユーズド・タイアを履いたときのバランスにも満足していました。ただし、ニュータイアを装着したときのバランスはさらに煮詰める必要がありました」予選結果はそれほど悪いものでもなかったが、チームはさらにいい成績を期待していた。予選グループ内における佐藤琢磨のポジションは8番手。わずか0.12秒差でトップ6が進出できるセグメント2に駒を進められず、佐藤琢磨は結果的に15番グリッドからレースに臨むことになった。「期待外れの結果でしたが、純粋なスピードにかんしていえばわずかに不足していたのも事実です。予選グループ内の上位陣とは僅差でした。本当の接戦で、わずかな差で敗れたのです。最終戦ではQ2に進出したいと願っていたので、この結果は本当に残念でした」この予選結果と、ソノマが極めてオーバーテイクが難しいコースであることを考慮すれば、最初のピットストップを早めに行って他のドライバーとは異なるサイクルでレースを戦う戦略を選択することは、極めて論理的な判断だといえる。「過去2年間、ソノマではいい予選結果を得られませんでしたが、レースでは上位でフィニッシュできました。だから、今年もまた可能だと僕は思いました。レースは3ストップでも余裕で走りきることができますが、タイア・デグラデーションが激しいため、多くのチームは4ストップを想定していました。もしもスティントの終盤に1秒近く速いラップタイムで周回できれば、スティントごとに10秒ほどを稼ぐことができるのです」Q2に進出できなかった佐藤琢磨の手元には多くのニュータイアが残されていたので、AJフォイト・レーシングは5ストップを視野に入れていた。好スタートを切った佐藤琢磨は13番手に浮上、抜かれたトニー・カナーンとミハエル・アレシンは悔しい思いでオープニングラップを周回したことだろう。「僕たちのペースはよかったし、ポジションも悪くありませんでした。僕たちは早めにピットストップを行うつもりでしたが、もしもほかのドライバーも早めにピットストップを行うようだったら、逆に僕たちがスティントを引き伸ばすことも考慮していました」佐藤琢磨は11ラップ目に最初のピットストップを実施。残るドライバーたちがピットストップを行ったところ、佐藤琢磨は10番手まで順位を上げることになった。これは好ましい展開で、2回目のピットストップを同じく早めの31周目に行うと、佐藤琢磨は8番手へと駒を進めた。もちろん、次にピットストップを実施したことで佐藤琢磨のポジションは下がった。しかし、ほどなくウィリ・パワーがアクシデントを起こし、ダメージを負ったマシーンを排除するためにイエローが提示されたところ、佐藤琢磨は再び8番手に浮上。つまり、レース戦略はうまくいっているように見えたのだが、厳密にいえば、これが佐藤琢磨にとっては躓きの始まりだった。「このときイエローが提示されていなかったら、僕たちは間違いなくトップ10争いができていたはずです」その8周後、佐藤琢磨は3回目の給油のためにピットスト...