2004年F1アメリカGPでは、B・A・Rホンダの佐藤琢磨が、自身初、そして日本人F1ドライバーとしては14年ぶりとなる3位表彰台を獲得した。朝のうちは雲が多かったインディアナポリス・モータースピードウェイ上空も、レース開始時刻の正午には前日同様の快晴となった。この時点で、気温23℃、路面温度は35℃。そして前日の予選時に悩まされた強風も止み、絶好のレースコンディションとなった。
フォーメーションラップの直前、5番グリッドのファン・パブロ・モントーヤが、ウィリアムズマシンのコクピットから飛び降り、ガレージへと走る。レースカーにトラブルが発生したようだ。スペアのマシンに乗り換え、モントーヤはピットレーンからスタートとなった。スタート直後、フロントローのイン側からスタートのミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が佐藤琢磨をブロックし、極端に寄せて行く。フェラーリの2台に行く手を阻まれた佐藤は、1コーナーをクリアする間に、9番手から上がってきたルノーのフェルナンド・アロンソにパスされて4番手に後退。後方ではジャガーやトヨタなど5台が絡む多重クラッシュが発生し、1周目からセーフティカーの導入となった。この時点で4番手スタートのバトンは、キミ・ライコネン(マクラーレン)に先行され、6番手に後退した。6周目にレース再開。ミハエル・シューマッハがすぐにトップに立つ。1コーナーで佐藤琢磨はキミ・ライコネンに激しくプッシュされるが、上手くしのいで4番手をキープ。その後はアロンソを追う展開になるが、なかなか前に出られない。しかし9周目のメインストレートエンドで、佐藤琢磨の目の前を走行中のアロンソの右リアタイヤがバースト。1コーナーのバリヤに突っ込んで、そのままリタイア。佐藤琢磨は、そのアクシデントに巻き込まれること無く、スタートポジションの3番手に復帰した。そして続く10周目には、ウィリアムズのラルフ・シューマッハが、エンジン全開のバンクで、コンクリート壁に激しく衝突。再度セーフティカーの導入となり、首位のミハエル・シューマッハを始め、9台が次々にピットイン。B・A・Rホンダの2人はコースにとどまったものの、セーフティカーの入る直前に燃料補給を終えたミハエル・シューマッハがそのままトップ。佐藤琢磨とジェンソン・バトンが2、3番手で追い上げる展開となった。大クラッシュしたラルフ・シューマッハは、意識はある模様だが、コクピットから自力で出られない。ドクターらが駆け付け、その場で処置を施し、メディカルセンターへと運ばれた。19周目にレース再開。B・A・Rホンダの2台がミハエル・シューマッハを追いながら、4番手のモントーヤ以下を引き離して行く。上位3人だけが、1分11秒台のハイペースだ。佐藤琢磨は低速区間ではフェラーリの真後ろにほとんど食い付くが、高速区間への立ち上がりで僅かに離されてしまい、オーバーテイクするまでには至らない。そして24、25周目に、ジェンソン・バトン、佐藤琢磨が相次いでピットイン。11、12番手にいったん順位を落とすが、佐藤琢磨は次々に先行車を抜いていく。しかしジェンソン・バトンはその直後に緊急ピットイン。ギアボックストラブルのため、今季初のリタイアとなった。30周目の時点で、佐藤琢磨は6番手まで上がった。この時点ではトップのミハエル・シューマッハと、追い上げる佐藤琢磨だけが、1分11秒台のハイペース。前を行くオリビエ・パニス(トヨタ)に、1周1~2秒のペースで差を縮めて行く。39周目には、0.5秒差に。そして40周目、裏ストレートのブレーキングで、鮮やかに抜き去って行った。3番手のモントーヤがピットに入っており、これで佐藤は表彰台目前の4番手となった。45周目。前を行く3番手のミハエル・シューマッハに2秒あまりの位置まで迫ったところで、佐藤は2度目のピットイン。その前後には1分10秒台のタイムを出すなど、快調なペースは変わらない。5番手に下がった佐藤琢磨は、ルノーのヤルノ・トゥルーリを追う展開。6秒以上あった差をジリジリと詰めて、60周目には2.2秒まで迫った。その時点のトップはフェラーリの2台。3番手を走っていたモントーヤは、スペアマシンに乗り換えたタイミングが違反と判断され失格。黒旗を振られ戦列を離れ、3位表彰台は佐藤とトゥルーリの争いに絞られた。61周目、2人の差はコンマ1秒。佐藤琢磨は1コーナーでトゥルーリの前に出たものの、2台ともそのままコースオフ。しかし佐藤琢磨が先にコースに復帰し、ついに表彰台圏内の3位にポジションを上げた。佐藤琢磨はそのまま、1分11秒台のペースを落とさず走り続ける。そして73周を走り切り、3位入賞! 1990年の鈴木亜久里以来14年振りの、表彰台に上がった日本人F1ドライバーとなった。優勝は、ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)だった。佐藤琢磨 (3位)「信じられない気持ちですよ。長い間頑張ってきたことの結果だと思います。チームの皆やHonda、そして全てのサポーターへお礼を言いたいです。皆は問題解決に向けて本当に頑張ってくれましたからね。今日は良いレースができましたし、マシンの調子は最高でした。タイヤの減りもずっと安定していましたから、ミシュランにもお礼を言いたいですね。スタートした後、アロンソに抜かれたのはちょっと驚きでしたし、その後のコース上のアクシデントで、とても混乱してしまいました。2回のセーフティカーの後には、マシンの調子も良く、再び元のポジションに戻れると思いました。何人かをバトルで抜くことができましたし、後半にヤルノがオイルフラッグで躊躇した時、抜きにかかったんです。最近の幾つかのレースは、様々なトラブルが出てしまったこともあって、チームにとって本当にタフだったんです。だからこそ、頑張ってくれたチームの全員に表彰台をプレゼントできて、本当に良かったです」ジェンソン・バトン (26周リタイア)「今日は本当にドラマチックなレースだったね。スタートが上手く決まらず、アロンソ、ライコネンの2人を前に行かせてしまったんだ。最初のセーフティカーの後、マシンは良くなってきたんだけど、ライコネンにふさがれてなかなか前に行けなかった。ラルフのクラッシュの時の2回目のセーフティカーが出た時は、ピットストップせず、そのまま走り続けることに決めたんだ。このチームの戦略は間違っていなかったと思うよ。僕らのピットストップの前、約6ラップほど トップを走るマイケルの後ろにつけることができたんだ。マシンはとても安定していて、良かったよ。特にブレーキングの時にはね。タイヤのグリップも良か...