ジョージ・ラッセル(メルセデス)が2026年F1カナダGPスプリントを制し、今季初のスプリント勝利を挙げた。しかし、このレースの主役は単なる勝者ではない。メルセデス内部でついに表面化した、“エース争い”そのものだった。チームメイトのキミ・アントネッリは序盤から執拗にラッセルへ襲いかかり、接触寸前のバトルへ発展。コース外走行、ホイール同士の接触、無線での抗議。メルセデスのガレージには、これまで抑え込まれていた緊張感が一気に噴き出した。
ここ数戦、流れは完全にアントネッリ側へ傾いていた。史上初となるデビュー3連続ポール・トゥ・ウインを達成し、ランキング首位へ浮上。マイアミではラッセルが完全に主役の座を奪われ、“メルセデスの未来はアントネッリ中心”という空気がパドックを支配していた。だが、モントリオールでラッセルは黙っていなかった。アップグレード投入でメルセデス復活今回のカナダGPでは、フェラーリとアストンマーティンを除くほぼ全チームがアップグレードを投入。その中で最も効果を見せたのがメルセデスだった。スプリント予選ではラッセルとアントネッリがフロントロウを独占。しかも2列目のマクラーレン勢にコンマ3秒以上の差をつけており、W17の進化は明確だった。カナダ特有のストップ&ゴー特性、縁石処理、低速トラクションでメルセデスは一歩抜け出した。これまで弱点だったタイヤの立ち上がりも改善されており、オープニングラップでポジションを守り切れたこと自体が今季のメルセデスとしては異例だった。だが、その直後からチーム内対決が始まる。“かなり危険だ” アントネッリが無線で不満アントネッリはスタート直後からラッセルのDRS圏内へ張り付き続けた。そして5周目、ターン1で勝負へ出る。ラッセルはイン側を厳しく閉じ、アントネッリはシケインをカットする形で回避。その後も押し出されるように芝生へ飛び出し、無線で不満を爆発させた。「かなり危険だ」アントネッリはラッセルへのペナルティを要求。しかし、この2台の争いで最も得をしたのはランド・ノリスだった。マクラーレンのノリスは2台の隙を突いて2番手へ浮上。するとトト・ヴォルフは即座に無線を入れる。「無線で文句を言うんじゃない。ドライビングに集中しろ」メルセデス代表自ら感情を抑え込もうとするほど、状況はヒートアップしていた。THIS. MOMENT. #F1Sprint #CanadianGP pic.twitter.com/bwYtMUEc6g— Formula 1 (@F1) May 23, 2026 ノリスは再び“漁夫の利” ピアストリも大量得点トップ2の争いの背後で、マクラーレンは冷静だった。ノリスは終盤までラッセルの背後0.数秒差を維持。しかし、モントリオール特有の抜きにくさもあり、決定打には届かなかった。それでもマクラーレンはオスカー・ピアストリが4位に入り、再びダブル入賞。コンストラクターズ争いでは着実に大量得点を積み重ねた。ピアストリは終盤、ウォール・オブ・チャンピオンズで接触したルイス・ハミルトン(フェラーリ)を攻略。さらにシャルル・ルクレールもハミルトンを抜き、フェラーリ勢は終盤に順位を落とした。ルクレールは5位、ハミルトンは6位。フェラーリは決定的に崩れたわけではないが、メルセデスとマクラーレンの戦闘力には届かなかった。フェルスタッペン苦戦 リンドブラッドが最後の1点レッドブルは厳しい週末が続いている。マックス・フェルスタッペンは7位。トップ争いに絡むだけのペースを最後まで見せられなかった。RB22はバンプへの対応に苦しみ、フェルスタッペン自身も週末を通じてマシン挙動への不満を口にしている。その一方で、レーシングブルズのアービッド・リンドブラッドはハードタイヤ戦略を成立させ、8位で最後のポイントを獲得。ルーキーながら非常に安定したレース運びを見せた。リアム・ローソンも18番手スタートから11位まで浮上。金曜は油圧トラブルでほぼ走れず、スプリント予選も未出走だったが、決勝では強いオーバーテイクを連発し存在感を示した。コラピントが9位 アルピーヌに光明アルピーヌではフランコ・コラピントが9位と健闘。ポイントには届かなかったものの、安定したペースで中団上位を維持した。一方、ピエール・ガスリーはピットレーンスタートから20位。週末を通じてマシンバランスに苦しみ、レースでも流れを作れなかった。ハースはエステバン・オコンが13位。FP1でクラッシュした影響もあり、本来の競争力を取り戻せないまま終わった。アウディは依然苦戦 ヒュルケンベルグにペナルティアウディは今回も苦しい内容だった。ガブリエル・ボルトレトは12位。ニコ・ヒュルケンベルグは終盤に10秒加算ペナルティを受け15位に沈んだ。依然としてレースペース不足は深刻で、特にタイヤマネジメントとストレートスピードの両面で苦戦が続いている。ただ、ボルトレトは混乱の多い中団で安定して走り切り、少しずつ経験値を積み重ねている。キャデラックとアストンマーティンは“データ収集モード”セルジオ・ペレス(キャデラックF1チーム)は14位。ソフトタイヤスタートというギャンブル戦略を採ったが、大きな順位上昇には繋がらなかった。アストンマーティンはさらに厳しい。ランス・ストロールはスタート直前にフロントサスペンション問題が発生し、修復後に16位完走。フェルナンド・アロンソはレース途中でピットへ戻り、データ収集を優先する形となった。週末を通じてアストンマーティンはドライバビリティ、エネルギーマネジメント、ギアボックス挙動に苦しんでおり、ホンダPUとのパッケージ最適化には依然時間が必要な状況が続いている。最後尾勢も波乱続きバルテリ・ボッタス、オリバー・ベアマン、アレクサンダー・アルボン、ピエール・ガスリーはピットレーンスタート。大きな順位回復はできなかった。特にウィリアムズは厳しく、アルボンはFP1クラッシュのダメージが尾を引いた。さらにレッドブルのアイザック・ハジャーはエンジントラブルを訴えて一度ガレージへ戻る展開に。それでも再びコースへ出て走行を継続し、決勝へ向けたデータ収集を優先した。“メルセデス復活”と“内部抗争”が同時に始まった今回のスプリントは、単なる短距離レースではない。メルセデスは確実に速さを取り戻した。アップグレードは機能し、W17は今季最高レベルの完成度を見せた。だが同時に、“誰を中心にタイトルを狙うのか”という新たな問題も生まれた。ランキング首位のアントネッリか。経験と実績を持つラッセルか。モントリオールで始まったこの内部対立は、2026年シーズン後半最大のテーマになる可能性がある。ジョージ・ラッセル「シーズンが再スタートした感覚」「正直、不...