レッドブルF1の2019年F1マシン『RB15』は、ホンダF1に13年ぶりの勝利という大きな節目をもたらした1台だ。レッドブルは2019年からルノーに代えてホンダのF1エンジンを搭載。レッドブル・ホンダとして初マシンとなるRB15は“空力の奇才”エイドリアン・ニューウェイが現場に本格復帰という触れ込みで登場した。
だが、RB15は2019年に新たに導入されたフロントウイングの解釈を誤った。以前のマシンは強力なフロントウイングをベースに構築され、空気を後方にむけ、足回りを密閉していたが、フロントウイングを簡素化しただけの対応でフロントとリアのバランスが崩れた。伝統的にレッドブルのマシンは“コーナリングマシン”としての特性があり、ルノーのエンジンパワー不足によるストレートでの赤字を巧妙なダウンフォースによるコーナーでのスピードとトラクションでカバーしてきた。また、近年、レッドブルはルノーの非力なF1エンジンでのストレートスピードをカバーするためにドラッグを減らし、ダウンフォースを削る方向でマシンを設計していた。そのため、ダウンフォースが減り、ホンダのF1エンジン搭載によってパワーが増したことで、特にリア周りのバランスがうまく取れないマシンに仕上がってしまった。結果として、開幕戦オーストラリアGPと第5戦スペインGPでの3位表彰台を獲得したものの、シーズン前半のRB15は勝利を争える戦闘力はなかった。しかし、第9戦F1オーストリアGPで導入したフロントウイングでようやくマシンのフロントとリアが連携するようになった。また、ホンダF1は第8戦フランスGPでジェット機部門と連携して信頼性とパワーに改良が加わった“スペック3”エンジンを投入し、戦えるマシンへと変貌していた。F1オーストリアGPでは、マックス・フェルスタッペンが魅せた。国際映像で流れた『エンジンモード11 ポジション5』というエンジニアからの“優勝を狙いにいく”メッセージを受け取ったマックス・フェルスタッペンは、フェラーリのシャルル・ルクレールを強引にオーバーテイクし、トップでチェッカー。ホンダF1に13年ぶりの勝利をもたらした。表彰台の頂点で“HONDA”マークを指さすフェルスタッペンにかつてのアイルトン・セナとホンダF1との絆を重ね合わせるファンもいたに違いない。その後、第11戦ドイツGPでもマックス・フェルスタッペンは勝利。そして、第12戦ハンガリーGPでは、ポールポジションを獲得。メルセデスのエンジンに冷却問題が発生していたオーストリア、雨で波乱となったドイツとは異なり、ハンガリーでのポールポジションはレッドブル・ホンダ RB15が本格的に戦えるマシンであることの証明となった。マックス・フェルスタッペンは第20戦ブラジルGPでも勝利。最終的にレッドブル・ホンダは3勝、9回の表彰台、3回の予選トップタイム、3回のファステストラップを記録する競争力を見せ、特にシーズン後半はメルセデスやフェラーリとコース上で勝利を争えるまで進化を果たして、レッドブル・ホンダはコンストラクターズ選手権3位でシーズンを終えた。戦える基盤を整えたレッドブル・ホンダが生み出した2020年F1マシン『RB16』は、エイドリアン・ニューウェイ節が炸裂した空力マシンとしてのルックスが復活しており、7月5日にレッドブル・リンクでいよいよ再開するシーズン開幕戦オーストリアGPでの勝利が期待されている。
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