ポルシェのル・マン ウィナーマシン、919ハイブリッドのEvoバージョンがスパ・フランコルシャンでトラックレコードを樹立した。4月9日、このアルデンヌの森にある全長7.004kmのベルギーグランプリサーキットをポルシェのワークスドライバー、ニール・ジャニが1分41秒770で周回した。34歳のスイス人ニール・ジャニは、ルイス・ハミルトン(英国)がメルセデスF1 W07ハイブリッドによって叩き出した従来の記録を0.783秒短縮した。
ルイス・ハミルトンは2017年8月26日に1分42秒553というラップタイムを樹立し、昨年のF1ベルギーGPの予選でポールポジションを獲得している。ジャニがトラックレコードを記録したラップをスタートしたのは10時23分で、最高速度359 km/h、平均速度245.61 km/hをマークした。気温は11℃、トラック温度は13℃だった。「本当に素晴らしいラップでした。ニールのドライバーとしての実に優れた才能と、偉大なエンジニアリングの技術が合わさった結果です。私たちの目標は、レギュレーションによって課せられている制限がなくなったとき、ポルシェ919ハイブリッドはどれほどのことが可能なのかを示すことでした。今回のトラックレコードは、現代で最も革新的なレーシングカーの究極のパフォーマンスを圧倒的な形で証明しました。」と、LMP1担当副社長フリッツ・エンツィンガーは述べた。「世界耐久選手権のレギュレーションによる制限を緩和したときのポルシェ919ハイブリッドの能力を示すことは、私たちの目標でした。このさらなる成功は、LMPチームのたゆまぬ努力の結果であり、エンジニアたちにとっては誇らしい日となりました。これを達成したニールとクルー全員には、お祝いの言葉を述べることしかできません。このプロジェクトには、2017年のLMP1の6人のドライバー全員が貢献しました。」と、チーム監督アンドレアス・ザイドルは述べた。ポルシェ919ハイブリッドにより、ポルシェは2015年~2017年に3年連続でル・マン24時間レースに優勝し、FIA世界耐久選手権(WEC)のマニュファクチュアラーズタイトルとドライバーズタイトルの両方を獲得した。「919 Evoは、とてつもなく圧倒的です。私がこれまで運転した中で、間違いなく最速の車です。グリップは私にとってまったく新しい次元というべきレベルで、これほどのものだとは、実際に運転するまで想像もつきませんでした。919 Evoで1周しただけで体感できるスピードは非常に速く、求められる反応速度は私がWECで慣れていたものとは大きく異なりました。2017年のベルギーGPにおけるポールポジションよりも速かっただけではありません。今日のラップは、昨年の私たちのWECでのポールポジションと比較して12秒も速いものでした。私たちはスパで非常に密度の濃い3日間をすごしました。今日の午前中、私は1周目から車のパフォーマンスがすばらしいことを知りました。レースエンジニアは車のセットアップで優れた仕事をしてくれ、ミシュランのタイヤも抜群でした。こうした体験を可能にしてくれたポルシェには、心からお礼を言いたいと思います。」と、ニール・ジャニはコメントした。束縛を解かれてレコードへFIAは、WECとル・マン向けの技術レギュレーションを定めることで、アウディ、ポルシェ、トヨタからエントリーしたコンセプトが非常に異なるクラス1のル・マンハイブリッドプロトタイプの間で、熾烈な競争をもたらすことに成功した。このレギュレーションにより、「もし制限に縛られなかったとしたら、ポルシェ919ハイブリッドのポテンシャルはどれくらいなのか」という疑問に、今まで答えることができなかった。「私たちにとって、いわばエンジニアの夢が叶ったようなものです。4年間、ポルシェ919ハイブリットを開発、改良してレースで戦わせた私たちは、この車に非常に思い入れがあります。私たちは全員、ポルシェ919ハイブリッドがどれほど成功を収めようとも、その能力が完全には発揮されてこなかったことを知っていました。実際、Evoバージョンも、十分には技術的ポテンシャルを発揮していません。今回は、リソースの制約はありましたが、レギュレーションの制限は受けませんでした。私たちがこの車につぎ込んだものによってF1の記録を破ることができ、非常に満足しています。」と、このプロジェクトを率いた、LMP1チーフレースエンジニアのスティーブン・マイタスは述べた。このレコードカーを準備するにあたって、ベースとなったのは2017年ワールドチャンピオンシップカーだった。まず、2018年のWECに向けて準備されながら、2017年末に撤退が決まったため、レースでは試されなかった開発事項が盛り込まれた。さらに、エアロダイナミクスに関して複数の変更点が加えられた。「ポルシェ919ハイブリッドEvo」では、パワートレインのハードウェアには手を加えていない。ポルシェ919を駆動するのはコンパクトなターボチャージャー付2リッターV型4気筒エンジンで、2種類のエネルギー回生システム(フロントホイールのブレーキエネルギーと排気エネルギー)が採用されている。内燃エンジンはリアホイールを駆動し、電気モーターはフロントホイールをブーストして4輪駆動の車を加速させる。同時に、大気中に捨てられてしまうはずのエグゾーストシステムからのエネルギーを回収する。フロントブレーキと排気システムから回生される電気エネルギーは、一時的に水冷式リチウムイオンバッテリーに蓄えられる。WEC効率レギュレーションでは、フューエルフローメーターを使用することで、1ラップあたりの燃料によるエネルギーが制限されていた。2017年のスパでの選手権ラウンドでは、ポルシェ919ハイブリッドの最終セッションは1ラップあたりのガソリン使用量の制限は1.784 km/2.464 リッターだった。このときにV4内燃エンジンによって得られた出力は約500 PSだった。この制限を取り払い、最新のソフトウェアを装備した結果、通常のレース用の燃料(20%のバイオエタノールを含むE20)を使用した状態で、919ハイブリッドEvoのV4エンジンは720 PSを発生した。2017年のWECスパ戦で使用することができた2つの回生システムによるエネルギー量は6.37メガジュールだった。これは、システムのポテンシャルをはるかに下回るものだった。レコードラップでは、ニール・ジャニは8.49メガジュールのフルブーストを利用することができた。これにより、回生エネルギーの出力は400 PSから440 PSへと10%増大した。エンジニアたちによって、919 Evoのエアロダイナミクスもレギュレーションの制限から解放された。新たに大型化されたフロントディフュー...
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