F1史上初となるナイトレース、そして新しいストリートサーキットで開催されたF1シンガポールGP。レースは15番手からスタートしたフェルナンド・アロンソが、劇的な逆転勝利。去年のイタリアGP以来となる表彰台の頂点に登った。コース幅が狭く、バンピーな路面のためオーバーテイクが困難とされたシンガポールGP。レースを左右したのは、セーフティカー導入時での運とチーム力だった。
最も運を味方につけたのが優勝したフェルナンド・アロンソだ。前日の予選でマシントラブルが発生し、15番グリッドからのスタートが決定したことで、ルノーはアロンソにスーパーソフトタイヤ&軽い燃料でオープニングラップで順位をあげるというアグレッシブな戦略に出た。アロンソが1回目のピットストップを終えた直後の15周目にネルソン・ピケJr.によるクラッシュのためセーフティカーが導入。唯一のピットストップを済ませていたアロンソにレースは有利に傾く。チーム力という点でもシンガポールのルノーは光っていた。金曜・土曜のフリープラクティスでトップタイムを記録するなど、アロンソのR28のセッティングは決まっていた。また、2回目のピットストップを抜群のタイミングと作業で終えたことにより、ピットアウト時にトップで戻ることができたのも、チーム力が成し遂げた技だろう。ウィリアムズのニコ・ロズベルグも運とチーム力で2位表彰台を獲得した。ピットストップ直前にセーフティカーが導入されたことにより、ストップ&ゴーペナルティ覚悟で給油を余儀なくされたロズベルグだが、マッサのトラブルにより裁定に時間がかかったことが幸運となった。セーフティカー解除時にトップを走行していたロズベルグは、裁定がでるまでの間、後続とのギャップを大きく広げることができた。ペナルティ裁定後も可能な限りコースに留まる決断をしたチームの判断も光った。レッドブルは運を掴み損ねたチームだった。ピケJr.のクラッシュ時に、一早くセーフティカー導入を予測して2台のマシンをピットに入れ、アロンソの後ろでコースに戻ったレッドブル。しかし、マーク・ウェバーはギアボックストラブルでリタイア。デビッド・クルサードは、2回目のピットストップ時に燃料リグが抜ける前に発進。なんとか留まったもののタイムをロスしたことにより、7位という結果に終わった。大きなポイントを残せるチャンスをトラブルとミスでふいにしてしまった。1ストップ作戦はシンガポールでは有利に働かなかった。トヨタのヤルノ・トゥルーリ、フォース・インディアのジャンカルロ・フィジケラが1ストップ戦略を選択したが、フューエル・エフェクトの大きなシンガポール市街地コースでは、スーパーソフトと重い燃料ではペースを発揮することはできなかった。運とチーム力で最もレースを台無しにしたのはフェラーリだ。ポールポジションからスタートし、首位をキープしていたフェリペ・マッサだが、1回目のピットストップ時に燃料ホースを引きちぎってスタートするという大失態。信号式のシステムを使用するフェラーリはヨーロッパGPでもライコネンが同様のミスを犯した。レース中もマッサが障害物を踏むなど、チームとしての緊張感が欠けるフェラーリ。シンガポールの結果でコンストラクターズでもマクラーレンに先を行かれた。キミ・ライコネンのクラッシュに弁解の余地はないだろう。彼のチャンピオンシップの夢は断たれた。(F1-Gate.com)