「ビジュアライゼーション(視覚化)」という手法はスポーツ心理学では一般的なものだが、マクラーレンのF1ドライバーであるオスカー・ピアトリは明らかに信者ではなく、F1へのアプローチにおいてはより冷静で現実的であることを好む。メルボルン出身の22歳は2023年のルーキーシーズンにポールポジションからスプリントレースを制し、年間を通じて2回のグランプリで表彰台に上った。初表彰台は鈴鹿サーキットだった。
しかし、ピアストリは後ろを振り返るようなことはせず、F1初優勝をしっかりと見据えているが、そのようなことが現実になることを「あえて夢見る」人ではないと最初に認めた。「いつも次のセッション、あるいは次の週末に集中し、それを最大化しようとしている」と第2戦サウジアラビアGPを4位で終えた後、ピアストリはSpeedcafeに語った。表彰台を逃したことは間違いなく残念なことだが、ピアストリは、どの週末でも良い仕事ができたかどうかを知る手段は他にあると語った。「良い週末を過ごしたか悪い週末を過ごしたか、そして自分の持っているものを最大限に活用できたかどうかを判断するのは非常に簡単だと思う」とピアストリは説明した。「自分自身を判断するのはとても簡単だ」「いい仕事ができたかどうかは週末を終えればわかるものだ。例えば日本では、僕たちは明らかに2番目に速いクルマだったから、ペレスが入賞できなかったとしても、表彰台に上がることはある意味で最低限のことだった」「僕のトップ3には入らなかったし、シーズンのトップ5レースでもなかったけど、それでも、シーズンのベストリザルトのひとつだだった」「週末がどうだったかは、結果がすべてを語ってくれるとは限らない。3番目か4番目に速いクルマに乗って表彰台を獲得できた場合、結果は同じでも、それを達成したときの感覚はまったく異なる」ピアストリは、レースでの勝利やタイトルを想像するのは時間の無駄だと言う。「F1では、このスポーツはまだクルマとドライバーの両方に大きく依存している。多くは車だ」「グリッドで一番遅いクルマに乗っていたら、レースで勝つこともチャンピオンシップで勝つこともできない。単純なことだ。どんなに頑張っても、どんなに望んでも、そうはならないんだ」初優勝やタイトル獲得について質問されたピアストリは「それを夢見る勇気はほとんどない」と付け加えた。「そのようなことを願ったり、夢見たりすることは、建設的であるどころか、意気消沈させることになりかねない」その代わりにピアストリは、自分のコントロール下にあること、自分が実際に影響を及ぼし、達成することができることについて、冷静で明晰な目を保つと説明した。「そういったことに集中することで、僕はもっと誇りと幸福を得ることができるだろう」とピアストリは語った。「3位でフィニッシュできるのなら、そうすればいい。でも、明らかにレースに勝てるようなマシンを持っていないのなら、そんなことを考えても仕方がない」