ブラッド・ピット主演の話題作『F1/エフワン』が世界中のファンを魅了するなか、同作でピットが演じたキャラクター「ソニー・ヘイズ」のバックストーリーには、実際のF1史に残る悲劇が色濃く反映されていたことが明らかになった。映画はニューヨークとロンドンでの華やかなプレミア上映を経て先月公開され、リアルで迫力あるF1描写が高い評価を受けている。
ピットは、架空のAPXGPチームに復帰するベテランF1ドライバー・ソニー・ヘイズを演じ、新人ドライバー、ジョシュア・ピアース(演:ダムソン・イドリス)と共にチームを率いる。モデルとなったのはマーティン・ドネリーの大事故ピットは最近出演したF1公式ポッドキャスト『Beyond the Grid』の中で、「ソニー・ヘイズ」の過去が、1990年スペイングランプリ(ヘレス)で起きたマーティン・ドネリーの大クラッシュをベースにしていると明かした。「ソニーの過去はマーティン・ドネリーのクラッシュに基づいているんだ。彼は僕らに映像を提供してくれて、キャラクターの土台を作る手助けをしてくれたんだ」とピットは語った。アイルランド出身の元F1ドライバー、ドネリーは、当時所属していたロータスでのフリー走行中、高速でガードレールに激突。マシンは粉々に砕け散り、彼は命に関わる重傷を負った。この事故により、ドネリーのF1キャリアは事実上終わることとなった。ドネリーの壮絶な経験と、それを惜しげもなく共有した姿勢は、ピット演じるヘイズの“過去に囚われながらも前を向く”キャラクター性にリアリティをもたらしている。マーティン・ドネリーF1界の全面協力──本物の世界に入り込んだ映画制作『F1/エフワン』の撮影は2023年から2024年の実際のグランプリ開催中に行われ、F1の複数チームが撮影に協力。ピット自身もマクラーレンの2023年マシンをアメリカ・サーキット・オブ・ジ・アメリカズで走らせるという貴重な体験をした。「今でも恋しいくらいだよ。あんな経験は初めてだった。マクラーレンのザク・ブラウンに感謝してる」とピット。また、撮影はメルセデスのシミュレーターやウィリアムズの施設でも行われ、映画に登場するAPXGPの本拠地はマクラーレンのファクトリーが使用されたという。「彼らは僕たちを迎え入れてくれた。F1や各チーム、チーム代表、そしてルイス(・ハミルトン)がいなければ成り立たなかった。ルイスは脚本にも多大な影響を与えてくれた」とピットは述懐する。映画の規模と革新性について、ピットは「こんな大胆なアイデアは他にない」と語り、F1シーズン中に撮影が行われたことを“唯一無二の映画体験”だと振り返っている。F1ドライバーたちも絶賛──リアリティと迫力の融合『F1/エフワン』は、現在のF1ドライバーたちからも高い評価を受けており、リアルな描写とドラマ性の融合によって、F1の魅力を新たな視点から伝えることに成功している。ソニー・ヘイズというキャラクターは、マーティン・ドネリーという実在の人物の苦悩と希望を継承しながら、映画の中心に据えられた。その結果、本作は単なるスポーツ映画を超え、F1という過酷な世界の「真実」を映し出す作品として、多くの観客の心を打っている。